11月の読書

11月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:3832

ふたりの世界 2 バリケードの恋愛ふたりの世界 2 バリケードの恋愛感想
様々な考え方、立場の人たちが愛し合う二人を取り囲む。毎日のように誰かが殺される。人びとは異常な日々に慣れてしまう。けれども、明日殺されるのは自分のよく知っている人、大切な人なのだ。どこにどのように動いても、どこかで誰かが傷つかずにはいられない八方塞がりのなかで、恋人たちは、これからどうしたらいいのだろう。
読了日:11月29日 著者:ジョアン・リンガード
マローンおばさんマローンおばさん感想
居場所って何かなあ。心許せる友だちと一緒にいられることだろうか。分かち合えることだろうか。ファージョンの詩と、アーディゾーニの絵とが、ぴったりと合わさって美しい。この一冊は格別の居場所になる。両手を広げて、このわたしに(それからあなたに)「あんたの居場所はここにあるよ」と言っている。
読了日:11月28日 著者:エレノア・ファージョン
ふたりの世界 1 ベルファストの発端ふたりの世界 1 ベルファストの発端感想
起こっていることだけをみれば子どもらしい冒険で、街路を走り回る子どもたちの姿はほほえましいくらいなのだ。でも、両者の間にあるのは正義の名を借りた本物の憎しみだ。あまりに理不尽な代償に、事は「宗教」という名を借りた別者なのだという事を寒々と認識する。同時に子どもたちの間に起きかけている事の明るさに胸が熱くなる。
読了日:11月27日 著者:ジョアン・リンガード
死者の学園祭 赤川次郎ベストセレクション(12) (角川文庫)死者の学園祭 赤川次郎ベストセレクション(12) (角川文庫)感想
物語はおもしろい。まるで手品みたいに、目の前でぱたぱたっと四角い箱が別の形に変わっていくのを夢中で見ている。主人公もその仲間たちも軽やかでチャーミング、物語のまとめ方もさわやか。でも少しばかり抵抗がある。あちらもこちらも気持ちを向けるべき方向が5度から10度くらいずれているような気がして、ちょっと居心地が悪い。
読了日:11月24日 著者:赤川 次郎
フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり)フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり)感想
51人分の物語(章)とそれ以上。たくさんの人々がすれ違ったり、出会ったり、別れていく。人々は、何度も繰り返し、違う人びとの物語の片隅に顔を出す。他の人の視点から、少しずつ見えてくる陰影が好きだ。この本のなかには、たくさんの人々が住んでいる。読んでいると、この本一冊が、一つの町なのだと思えてくる。
読了日:11月20日 著者:チョン・セラン
ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)感想
人の真心と真心とが呼び合った奇跡。物語のなかには、いくつかの時代いくつかの時間がある。その一時ひとときが懐かしい。あの頃の町の風景、流行った歌、出来事だ。この物語の地続きのどこかに私もいた。同じものを見て聞いて、同じ空気のなかにいた、と思いだす。それから無性に誰かに手紙を書きたくなってきた。もちろん手書きで。
読了日:11月19日 著者:東野 圭吾
昼が夜に負うもの (ハヤカワepiブック・プラネット)昼が夜に負うもの (ハヤカワepiブック・プラネット)感想
情勢不安なアルジェリアでずっと生きてきたユネス(ジョナス)。苦しみつつどっちつかずにみえた彼がそこにずっといつづけたことに彼の中にある芯の強さを思う。アラブ人でありアラブ人でなく、ランス人の友とみられ敵とみられ、ただ一人の女性を愛し古くからの友を思う彼がここにいる。腕を広げて帰ってこいと待っている。
読了日:11月17日 著者:ヤスミナ カドラ
地球にちりばめられて地球にちりばめられて感想
自分の生まれ育った国が消える、ということはどういうことなのだろう。読みながら、根っこが消えてしまったような不安を感じていた。でも、それだけじゃなかった。吹っ切れたような自由を感じていたし、それがどんどん広がってくるのを感じていた。神話であり、民話であり、まるっきり新しい種類の物語であるような感じ。
読了日:11月15日 著者:多和田 葉子
インヴィジブルインヴィジブル感想
不可視という言葉で遮断された場所に置かれ、この場所はとっても孤独な所だ、という感じと、いいや、そんなことはない、という感じを同時に感じる。この場所の本当の姿は不可視だけれど、本当は思いもかけないものが、見えないだけでそこに当たり前にある。自分自身も見えていないもの。
読了日:11月13日 著者:ポール オースター
大きなたまご (岩波少年文庫)大きなたまご (岩波少年文庫)感想
鶏が産んだ見たこともない大きな卵。そこから生まれてくるものへの期待。生まれてきたらそれは実際期待を裏切らないものだった。さらにそれはほかならぬ自分(自分と等身大の主人公)のペットなのだ。このはちきれんばかりの喜び。生きものが大好きな子と一緒に楽しんだ思い出深い本が岩波少年文庫になって帰って来てくれました。
読了日:11月11日 著者:オリバー・バターワース
オレゴンの旅オレゴンの旅感想
絵も詩も美しい旅の絵本。サーカスのくまにつけられていた鎖と、道化の赤いハナは、たぶん同じものだ。デュークとオレゴンは、自分の似姿と一緒に旅をしていたのではないか。デュークにはデュークの、オレゴンにはオレゴンの森がある。ふたりとも、これから自分の本当の旅が始まるのではないか。くまはくまの場所で、人は人の顔で。
読了日:11月08日 著者:ラスカル
犬がうまれる - 絵と言葉の犬あるある101 …あ、猫もちょっぴり - (ワニプラス)犬がうまれる - 絵と言葉の犬あるある101 …あ、猫もちょっぴり - (ワニプラス)感想
満面の笑顔の子がこちらに顔を向けて言っている。「かわいい なまえ ありがと よんでくれて ありがとう」って。ううん、こちらこそ、うちの子になってくれてありがとう。お返事してくれて、走ってきてくれてありがとう。ね。このイラストのタイトルは「ぼくがぼくになった日」私も忘れないよ、君がうちの子になった日。
読了日:11月07日 著者:雲がうまれる
犬を飼う (小学館文庫)犬を飼う (小学館文庫)感想
犬も人間も虫けらもない。消えようとしている命だけれど、消えてしまうまでは命だ、命がそこにあることの重さに打たれ、悲しいより辛いより何よりも、ただぼうっとしてしまった。生涯が短かろうが長かろうが、大切なだれかを失いつつ生きてきた彼ら、私たち。誰かと家族になったとき、その失った部分までもともに抱えつつ寄り添い合う。
読了日:11月06日 著者:谷口 ジロー
マンゴー通り、ときどきさよなら (白水Uブックス)マンゴー通り、ときどきさよなら (白水Uブックス)感想
エスメラルダはマンゴー通りから自分の足で出ていく。残してきた人の代わりに出ていき帰ってくると言ったその通りこの本になって帰ってきた。同時に出ていったきり帰れないでいる人たちもこの本は連れて帰ったのだと思う。帰ってきてみればマンゴー通りの恐ろしい場所もどうしようもない人たちも間違いなくあった美しさもみな詩になる。
読了日:11月04日 著者:サンドラ・シスネロス
ミスコン女王が殺された (創元推理文庫)ミスコン女王が殺された (創元推理文庫)感想
殺人事件の犯人と疑われたフォーチュンを助けるべく動きだした友人たちが素敵でおかしくて温かい。スパイという言葉に籠る冷たくて硬質なイメージがじわじわと溶けていく。彼女の隠している顔が寂しくなってくる。帰れなくなるよフォーチュン。読者としてもこの町の住民たちがどんどん好きになっていく。そこにずっと彼女にいてほしい。
読了日:11月02日 著者:ジャナ・デリオン

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