10月の読書

10月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2542

東西ベルリン動物園大戦争東西ベルリン動物園大戦争感想
動物園の動物と人々を巡るこぼれ話には笑みがこぼれる。政治や社会情勢からもっとも遠いように見えてど真ん中の動物園を仲立ちにして、東西の人びとの暮らしは興味深々。東から西へ亡命しようとするあの手この手の作戦にはハラハラした。再統一後、「二つはいらない」と言われたモノやそれに関わってきた人々の運命は切なかった。
読了日:10月30日 著者:ヤン・モーンハウプト
新版 核兵器を禁止する――条約が世界を変える (岩波ブックレット)新版 核兵器を禁止する――条約が世界を変える (岩波ブックレット)感想
情けないけれど「ICAN」という運動の名前さえ最近まで知らなかった私がこの本を読み、勇気が湧いてくるとけろりと言ってのけるのもどうかと思う。でも、正直、それが一番大きな感想だ、恥ずかしいけれど。「諦めるな。踏ん張れ。光が見えるだろう?そこに向かってはって行け」瓦礫の下でサーロー節子さんが聞いた言葉だった。
読了日:10月28日 著者:川崎 哲
黒の扉は秘密の印 (第二の夢の書)黒の扉は秘密の印 (第二の夢の書)感想
誰かがほかの誰かの夢を操作することができるなら恐ろしいことだ。そもそも誰かの夢の中に入っていくということ自体、悪意があろうとなかろうととんでもなくひどいことじゃないか。相手がどんなに親しい人でも自分の夢を覗かれるなんてこと絶対に嫌だ。
読了日:10月25日 著者:ケルスティン・ギア
草原に雨は降る (心の児童文学館シリーズ (3-10))草原に雨は降る (心の児童文学館シリーズ (3-10))感想
アパルトヘイト南アフリカの農園主の甥トリッキーと使用人の息子ディンゴは農園で遊びながら大きくなったが、二人は親友だと思っていたのはトリッキーのほうだけだった。農園はここ何年も干ばつが続いている。「草原に雨が降る」の草原は、干ばつの農園のことか。農園に雨が降る時、誰にとっても恵みの雨であってほしいと願う。
読了日:10月24日 著者:シェイラ・ゴードン
みすず 2018年 10 月号 [雑誌]みすず 2018年 10 月号 [雑誌]感想
『戦争と児童文学4 空爆と暴力と少年たち』(繁内理恵)を読む。語れない兵士の恐怖と不安の具現化である幽霊、彼らの中の息づくささやかな美しい場所。でも「それが実際の戦争の中で何のブレーキとしても働かない」こと、それでも「兵士としての価値観からは逃げ出せない」こと、容赦のない言葉は「若者を使い捨てにする戦争への痛烈な批判」であり、命の尊厳への敬意でもある。ブラッカムの爆撃機、読まなきゃ。
読了日:10月22日 著者: 
ダーウィンと旅してダーウィンと旅して感想
この物語のタイトルは『ダーウィンと旅する』だけれど、実際には彼女は家を離れることは一度もない。でも確かに旅をし続けている。彼女の成長の日々がそのまま大冒険のようだ。行く手を塞ぐたくさんの障害を、彼女はやがて越える。それが楽しみで仕方がない。彼女の旅の続きの物語をぜひ読みたい。
読了日:10月19日 著者:ジャクリーン・ケリー
木の葉つかいはどこいった?木の葉つかいはどこいった?感想
木の枝につかまって、とびだそうかどうしようか、と迷っている今年の葉っぱたち、あなたたちも、どうか飛んでいけますように。好きな時に好きな場所へ。いつの間にか、見送る立場になってしまったわたしも、木だ。最後の葉っぱのもうすぐの旅立ちを待ちながら、思っている。ただ、よき旅を!
読了日:10月17日 著者:ピーナ・イラーチェ
ジョヴァンニの部屋 (白水Uブックス (57))ジョヴァンニの部屋 (白水Uブックス (57))感想
ジョヴァンニに対するディヴィッドの蔑みは、自分自身(の身代わりであるジョヴァンニ)への侮蔑だったのだろう。ジョヴァンニはディヴィッドの分までの絶望(ディヴィッドは絶望することさえできなかったから)をひとりで引き受ける。ディヴィッドの語りを読んでいるとだんだん恥ずかしくていたたまれなくなってくる。
読了日:10月15日 著者:ジェームズ・ボールドウィン
十一歳の誕生日 (心の児童文学館シリーズ)十一歳の誕生日 (心の児童文学館シリーズ)感想
銃を撃つ、ということが、(無垢でいられた)子ども時代との決別の儀式のようになってしまう。その後のネッドの苦しみは、ヘッセ『デミアン』の明暗二つの世界を思い出させる。最後に、ネッドが小さいときから眺めていたおなじみの光景を、わたしも、彼と一緒に眺める。陰影を増して目の前に広がる光景を、美しいと思う。
読了日:10月09日 著者:ポーラ フォックス
桜草をのせた汽車 (心の児童文学館シリーズ)桜草をのせた汽車 (心の児童文学館シリーズ)感想
まだ子どもの姉弟が否応なしに大人にならずにいられなくて、そのうえどんな「成長の物語」が必要だろうと読み始めた時には思った。むしろ彼らを年相応の子どもに戻してやりたいと思った。読み終えて感じるのは、彼ら、大人・子どもの枠とは別の窓を持ったのだ、ということ。淀んだ空気のなかを風が渡っていくようだ。
読了日:10月04日 著者:ジリアン クロス
東京のちいさな美術館めぐり東京のちいさな美術館めぐり感想
よりすぐりの小さな図書館が106館!小さいからこそ、それぞれの美術館の個性が際立つ。その美術館ならではのこだわり、その由来、創立者の人物像、周辺の景色までが見所なのだ。一館一館が、じっくり味わいたい宝ものみたい。沢山のちいさな美術館を抱きこんだ東京というまちが、そのまま巨大な美術館、と思えてくる。
読了日:10月01日 著者:浦島茂世

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