12月の読書

12月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2695

エレナーとパーク Eleanor&Parkエレナーとパーク Eleanor&Park感想
最初のほうの、国語の授業での『ロミオとジュリエット』でのエレナーの言葉をずっと意識しながら、この本を読んでいた。エレナーは「シェイクスピアはふたりをバカにしている」と言った。「一目ぼれ」も否定した。もしかしたら、エレナ―の言葉は、作者の気持ちそのままだったのかな。それなら、エレナ―とパークの物語は、もうひとつの『ロミオとジュリエット』だ。


読了日:12月27日 著者:レインボー・ローウェル
ぼくらが漁師だったころぼくらが漁師だったころ感想
この物語は「普遍的な家族の絆とその崩壊の物語」であり、同時に「ナイジェリアという国が抱える、政治的、経済的、社会的なさまざまな矛盾が意識的に、しかも巧みに描かれている」という。ナイジェリアだけじゃないような気がする。踏みとどまりたいと思う「ぼく」の葛藤があまりにリアルで、ごく普通の(と思っていた)判断力さえも奪われていく姿が、ひたすら恐ろしかった。


読了日:12月21日 著者:チゴズィエ オビオマ,Chigozie Obioma
ぴいちゃあしゃん (乙骨淑子の本)ぴいちゃあしゃん (乙骨淑子の本)感想
中国で主人公を待っていたのは日本にいた時に教えられてきたのとは全く違う姿だった。このままページをめくらなければ、何も起こらないのではないか。いや、そんな加減のところで納得してはいけない、しっかり目を見開いてみなさい、と物語が誘いかけてくる。1964年の作品。巻末の鶴見俊輔「解説」が良い。「文学には、実人生に許されていない、そのような再生のはたらきがある」

読了日:12月17日 著者:乙骨 淑子
カランポーのオオカミ王カランポーのオオカミ王感想
シートンはとても矛盾に満ちた人間だった」そうだ。シートンの物語に惹かれ、次々に読んだ日々、シートンの「矛盾」に無意識に共感していたような気がする。シートンは、この矛盾から、さらに先へと進んでいけた人だったのだ。シートンは曾て、敬意をもって偉大なオオカミを描いた。ウィリアム・グリルは、敬意をもって偉大なオオカミを描いたシートンの姿も描いた。



読了日:12月10日 著者:ウィリアム・グリル
嘘の木嘘の木感想
この物語、ファンタジーである、といわれても、ミステリである、といわれても、なんだかちょっと違うような気になる。少女が真相に一歩一歩近づいていくことで見えてくるのは、事件の真相以上のものだ。事件の探究は、少女にも、子どもから大人になるための脱皮をさせる。最後の一行に私は声をあげて笑いたくなる。ちょっと苦手だなと思っていたあの人の事、最高だと思えた瞬間。


読了日:12月08日 著者:フランシス・ハーディング
朝はだんだん見えてくる (名作の森)朝はだんだん見えてくる (名作の森)感想
苦しみもがき続ける奈々に既視感のようなものを感じてしまう。同時にそこまで突き詰めることなく、大きなものにただずるずると呑まれるように安心のなかに潜って行ってしまったことも思いだす。それが大人になることだと思っていた。本当にそうだったのだろうか、中途半端なまま逃げ出したものは、逃げ出したころのまま、そこで待っているのかもしれない。
読了日:12月06日 著者:岩瀬 成子
オオカミを森へ (Sunnyside Books)オオカミを森へ (Sunnyside Books)感想
夢中になって読んでいるうちに、ああ、もう終わってしまったか、と思うようなドキドキの冒険物語だけれど、もっとも心に残るのは、色。雪の中を三頭のオオカミが駆けていく。色は白と黒と灰色。その背に乗った二人の子どものマントの鮮やかな赤と緑だけが、この風景の中に浮かび上がる色。豊かなイメージがくっきりと心に残る。

読了日:12月04日 著者:キャサリン ランデル,ジェルレヴ オンビーコ
青と白と青と白と感想
震災後の家族の姿を追いながら、被災した人々に決して寄り添うことのできない溝を思い知らされる。亡くなった人は、遺体ではなくて、おばだ。流された場所は、被災地ではなくて、幼い時から何度も駆け上った坂道だ。便利に使ってきた言葉は、人や場所から名前を奪う。小説家の主人公の逡巡。小説とは何者なのか、小説に何ができるのか、との問いかけと大きな答えが、沁み渡る。


読了日:12月03日 著者:穂高 明
ポンド氏の逆説【新訳版】 (創元推理文庫)ポンド氏の逆説【新訳版】 (創元推理文庫)感想
なんとも知的で優雅な「言葉」のゲームに招待されたような気持ちになる。穏やかで牧歌的な語り口、静かに展開していく物語には、実はかなりおどろおどろしいものがひそんでいたりするではないか。本を読みながら、何の気もなく、これはおとぎ話のようだ、と感じていたけれど、そういう意味で、まさしくこの作品集は「おとぎ話」集だった。



読了日:12月02日 著者:G・K・チェスタトン

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