11月の読書

11月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:3644

次元を超えた探しもの: アルビーのバナナ量子論次元を超えた探しもの: アルビーのバナナ量子論感想
科学の扉を開き損ねたまま大人になってしまった私は、「物語の初っ端で、早くも挫折?」と焦っていたが、要はパラレル・ワールドだ! 理屈はあとからついてくる(かもしれない) パラレルワールドとの接触によって母親の死を受容していく少年の姿を見ながら、思う。私には苦手というイメージしかなかった科学の世界は、きっと私が考えているより遥かに美しい世界なのだろう。


読了日:11月29日 著者:クリストファー エッジ
ニッポン全国・和菓子の食べある記: 高島屋・和菓子バイヤーがこっそり教える郷土の和菓子480品ニッポン全国・和菓子の食べある記: 高島屋・和菓子バイヤーがこっそり教える郷土の和菓子480品感想
全国47都道府県 500種の和菓子が、この本には紹介されている。全ページカラー、和菓子とお店の写真入りで、見ているだけで楽しくなる。端からめくっていけば、和菓子といえども、その姿や由来、素材などが、その土地土地の風土や歴史を背中に背負っているような気がしてくる。都道府県別だから、お菓子から旅を始めよう、と考えるのも楽しい。和菓から蘇る思い出までも愛おしい。

読了日:11月28日 著者:畑 主税
ニューヨーク145番通り (Y.A.Books)ニューヨーク145番通り (Y.A.Books)感想
ひどい街だ、怖い街だ、と思うけれど、ごく普通の人たちが、ごく普通に暮らしている。そして、(驚いたことに)この貧しさの塊みたいな町で、少年や少女は弁護士や医者を目指したりもする。この短編集、同じ人間の葬式で始まり、結婚式で終わる。逆ではない。同じ人間の、「葬式」で始まり、「結婚式」で終わるんだよ。作品の並びの粋なこと。作者からのウィンクみたいで、素敵だ。

読了日:11月27日 著者:ウォルター・ディーン マイヤーズ
クララクララ感想
ずっと前に『サイのクララの大旅行』という奇妙な本をおもしろく読んだが、書かれていないことが気になっていた。たった40ページほどのこの絵本には私の知りたかったことが書かれている。絵で。それはクララの豊かな表情だ。クララ、日々は楽しかった? いいや、ともかく最後の最後まで全力で生き切っただけだよ、と言うかもしれない。この絵本でクララに再会できてよかった。
読了日:11月25日 著者:エミリー・アーノルド・マッカリー
シャルロットの憂鬱シャルロットの憂鬱感想
若い夫婦が元警察犬のシャルロットと一緒に暮らすようになると、時々奇妙なことに遭遇する。過ぎてしまえばほのぼのとした事件、ともいえるが…。事件を起こすのは人間で、誰かのささくれだった思いがからんでいる。巻き添えにされる動物たちこそよい迷惑だ。それなのに、しっぽを振って、寄り添って。人の顔を見上げる嬉しそうな顔に出会えば、申し訳ないような気持ちになる。

読了日:11月24日 著者:近藤 史恵
あたしのクオレ(下) (岩波少年文庫)あたしのクオレ(下) (岩波少年文庫)感想
印象に残るのは、先生が保護者会を開いて、「飛び級」について、親たちに説明する場面。「飛び級すれば、子どもは一年得をする」と言う親たちのなかで、エリザの叔父のレオポルドは言う。
「ぼくには損をするようにしか思えません。子ども時代が一年、短くなります」 レオポルドおじさんの考える「子ども時代」が好きだ。このおじさんに育てられたエリザが羨ましいな。



読了日:11月22日 著者:ビアンカ・ピッツォルノ
あたしのクオレ(上) (岩波少年文庫)あたしのクオレ(上) (岩波少年文庫)感想
各章と章の間に挟まれた、プリスカによる創作童話がとってもおもしろい。楽しい章ごとの振り返りでもあるが、心動かされるのは、子どもが、不快な現実を乗り越えるための手段として、体験したことを物語にしたててしまう、その逞しい想像力と筆力だ。プリスカの将来の夢は、作家。きっとなれるよ。自分の子ども時代を題材にした作品で有名な作家になるよ。


読了日:11月22日 著者:ビアンカ・ピッツォルノ
終の住処 (新潮文庫)終の住処 (新潮文庫)感想
その後の人生だけではなくて、それ以前の人生の色(「意味」ではなくて、もっと漠然とした「色」)さえも、塗り替えてしまう、そういう一瞬があるのかもしれない。彼と妻が浮かべる「疲れたような、あきらめたような」表情が、大きな翳りの色となって、彼の人生を最初から最後まで覆っているのではないか。なんとも滅入るような、惹きつけられるような、不思議な小説。


読了日:11月20日 著者:磯崎 憲一郎
こどもってね……こどもってね……感想
たくさんの子どもが出てくる。どれも一人の子どもかもしれないし、たくさんの子どもの一瞬かもしれない。どの表情も、おとなになると、なかなかみられなくなる。おとなは用心して、ひとのみているところで、きっとそういう顔をしないようにしている。私、体は大きくなったけれど世界もせまくなってしまったよ。「こころのなかは ずっとこどものまま」の素敵な人、いるよ、いるよね。

読了日:11月18日 著者:ベアトリーチェ・アレマーニャ
あひるあひる感想
じわじわと音もなく進んでいくものの不気味さ。幸田と思ってみている世界は、本当に見えたままの世界なのだろうか。自分の持って居る先入観や建前的な物の見方を揺さぶられるような感じ。私、何を見せられた? どういう気持ちで眺めていた? 突然ひっくり返された世界に、自分の見方のあやふやさを思い知る。私も、そこで孔雀を見たのかな。


読了日:11月17日 著者:今村 夏子
マリゴールドの願いごと (Sunnyside Books)マリゴールドの願いごと (Sunnyside Books)感想
身分を越えて惹かれ合っていく二人の少年少女は、自分たち(?)がある陰謀の中心に据えられていることに気がつく。選択肢があるが、どれを選んでも敵の思う壺に嵌ってしまう。さて、ハラハラドキドキの冒険の始まり。二人の一途さを追いかけて、大団円に向かってひた走る楽しさ。この物語の結びの言葉「今を楽しめ、とこしえに」ああ、おもしろかった、と本を閉じる読書の喜び。

読了日:11月13日 著者:ジェーン フェリス
くもりときどき晴レルくもりときどき晴レル感想
ささやかな出来事で、表現しようもないし、そんなこといちいち言うのも変な感じだし。そんなだから、大人になるまでにすっかり忘れてしまっていた。この本のなかのそういうものたちの重なりが、一人一人のこどもをリアルに浮かび上がらせる。これは、私の知っている子、もしかしたら(状況さえ整えば)私だったかもしれない子(と、その周辺にいる、大人になった私)の物語なのだ。


読了日:11月12日 著者:岩瀬 成子
至福の烙印 (エクス・リブリス)至福の烙印 (エクス・リブリス)感想
起こったことも、感じたことも、遠景を、水をたっぶり含んだ筆でさらりと掃いたようなイメージ。『ヤーコプは眠っている』がとても好き。水頭症の弟が太陽だったら、名もないまま死んだヤーコプは月だろう。見える太陽と、見えない月が、痛みを伴いながらも灯りになって、この家族を照らしている。灯りのもとで、苦しみや絶望の瞬間まで、「祝祭」のように輝く光景に変わる。


読了日:11月10日 著者:クラウス・メルツ
ほしのこほしのこ感想
いろいろな想念が混ざり合ったり分離したり。どれが「わたし」でどれが「おれ」なのか、現実なのか夢なのか、別の世界なのかも、わからなくなる。星になったみたいで心地よい。「からだが動かなくなるまで、この星で、生きる」 強く生きるとか幸せになるとか、そういうことじゃなくて、ただ「生きる」。「生きる」という言葉をまるで初めて見たようにも、感じる。


読了日:11月08日 著者:山下 澄人
引き潮引き潮感想
巻頭の言葉は「――人の営みには潮の満ち引きがある」 潮の満ち引きがあるのは、登場人物三人(四人)の性格もそう。――表に表れる性格も、その時々で、強く表れたり、遠のいたり。そして、その表に表れたものが、「運」の満ち引きを招くのだろう。彼らがたどりつくのはどこの港だろう。そもそも、満ちたり引いたりする潮が、本当にたどり着くところなんてあるのだろうか。


読了日:11月07日 著者:R・L・スティーヴンスン,L・オズボーン
ジェーンとキツネとわたしジェーンとキツネとわたし感想
色鮮やかなはずの現実の世界が色を失ってしまうなら、本当の自分の姿よりも悪意ある悪口の方がリアルだと感じられるなら、現実であっても現実とはいえないかも。色のない世界に色がさし始めた時は物語の力が輝く時。物語への信頼が膨らむ。それは、いじめに対して直接作用するわけではないが、誰も知らないうちに誰も知らない方向に、物語の力は、見えないツタのように延びていく。


読了日:11月03日 著者:ファニー ブリット
ジョージと秘密のメリッサジョージと秘密のメリッサ感想
裏表紙には「BE WHO YOU ARE.ありのままの自分で」とある。ありのままの自分でいる、それだけのことが、なぜこんなにも困難なのだろう。「男の子のふりをするのは、ほんとうに苦いんだ」というジョージの言葉は、こたえた。「ふり」をして、たった10歳の彼女はずっとたったひとりで耐えてきた。彼女の痛みの一番大きな原因が、周りの人たちの無理解ということは胸に突き刺さる

読了日:11月01日 著者:アレックス・ジーノ

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