『ニッポン全国 和菓子の食べある記: 高島屋・和菓子バイヤーがこっそり教える郷土の和菓子500品』 畑主税


埼玉は春日部市の知人が、時々お土産に下さる「どらやき」が、ふわふわで、しっとりとしていて、とにかく、とってもおいしいのだ。
この本のなかで、このどらやきをみつけたとき、「あっ」と思った。そう、最寄りの駅の名前も、お店の名前も間違いない。このどらやきです。
さぞや有名な和菓子屋さんだろうと思っていたのだけれど、紹介ページには「日本一の隠れ家的和菓子屋」とある。
個人宅のような表札だけを頼りに、最寄り駅から徒歩40分とは……今度こそ自分で、お店を訪ねて行ってみたくなった。


私のふるさとは群馬県
焼きまんじゅう(県民食、といわれると複雑な気持ちになるが)わたしには、懐かしい懐かしい味だ。
近所の神社のお祭りの日のおやつといったら、出店の焼きまんじゅう。焦げ過ぎた生地の苦さと味噌の甘さが懐かしい。
しかし、焼きまんじゅうに元祖たるお店があることなど、全く知らなかった。老舗である!
突然、おまつりのちょいとやくざなまんじゅうが、上品な若旦那に見えてくるから不思議なものだ。


全国47都道府県 500種の和菓子が、この本には紹介されている。全ページカラー、和菓子とお店の写真入りで、パラパラと見ているだけで楽しくなってくる。
端から順に読んでいけば、和菓子が、その姿や由来、素材などに、その土地土地の風土や文化、歴史などを写していることにも気がつく。


たとえば、
北海道の「元祖山親父」山親父とは熊のことなのだそうだ。バターと牛乳を練りこんだお菓子の表面には熊の姿が型押しされている。
宮城県の美しい飴菓子「霜ばしら」 東北の冬のしんとした冷たさがしのばれる。
石川県金沢市の「こもかぶり」は武家屋敷の土塀を雪から保護するために作った菰(こも)にちなむ。手の込んだ美しい民芸品のような姿だ。
福岡市の国宝金印。長崎では、南蛮渡来のカステラ。平戸藩松浦家御用菓子のカスドース。熊本の朝鮮飴。鹿児島のかるかんなど。九州には、国内と海外とを結んできた歴史を語る和菓子がいっぱいだ。


これは本当に一部・・・なのだ。だって、紹介されているお菓子は500種もあるのだから。
そして、嬉しいことに、紹介された和菓子全部のお店が、写真・住所付きで載っている。
都道府県別だから、お菓子から旅を始めよう、と考えるのも楽しい。(旅のお土産はもちろん・・・)
また、本の中で、思い出のお菓子に出会って「あ、これは・・・」といつ、どこで、どのように、が、さあっと蘇って、しばし郷愁に浸ったりする。
和菓子は、その思い出までも愛おしい。