10月の読書

10月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3189
ナイス数:166

しろばんば (新潮文庫)しろばんば (新潮文庫)感想
天城山麓の農村での耕作の子ども時代。ばあちゃと耕作、関係だけを取りざたすれば面妖な感じだけれど、村を上げての弱い者たちへの見守りの形でもあったか。大人たちの職場は、ほぼ自宅やその周辺。日がな遊び歩く子どもらに干渉することはなかったが、大人たちのそれとなくの見守りがあった。農村はややこしい、煩わしい。でも、温かい。私たちの祖父母、曾祖父母たちの若い日の姿。



読了日:10月30日 著者:井上 靖
13の理由13の理由感想
(再)この本を久しぶりに本棚から取り出して、パラパラとページを繰りながらあちこち拾い読みしていたら、いつのまにか夢中になって読み耽っていた。とうとう最後まで。残された者の目の前に示されるものは思いがけず明るい。悪意の雪玉がころがりながら膨れ上がることもあれば、善意や喜びの玉が膨れ上がることもあるはずだ。


読了日:10月27日 著者:ジェイ・アッシャー
私の名前はルーシー・バートン私の名前はルーシー・バートン感想
細かく見たら心に残る場面はあれもこれもいっぱいあるような、いいや、そこまで印象的な場面と言えるだろうか、と思うような。でも、何より言いたいのは、人生のなかのある本当に短い時間の輝きが、その人の人生の前にも後にも、大きな美しい傘のように広がって、すっぽりと覆うようなことがあるのだ、ということ。


読了日:10月25日 著者:エリザベス ストラウト,Elizabeth Strout
オープン・シティ (新潮クレスト・ブックス)オープン・シティ (新潮クレスト・ブックス)感想
「歩く」のはよい。とりとめのないのもよい。ほんとは、好きな類の小説のはずなのだけれど。語り手は人と付き合うことよりも人を景色のように眺めることの方が得意な人なのだろうか。歩きながら眺める風景は好きだけれど、なかには、立ち止まらないと私などには理解できない風景もあるし、立ち止まってゆっくり眺めたい風景もある。「オープン」という言葉が皮肉にも思える。


読了日:10月22日 著者:テジュ コール
きょうは、おおかみきょうは、おおかみ感想
誰だってきっとオオカミになってしまうときってあると思う。不気味な(でもとても悲し気な)オオカミは、ページを追うごとに愛らしいオオカミの子どもに変わっていく。バージニアとバネッサが遊ぶブルームズベリーは、どんどん豊かに美しくなっていく。魔法みたい。この絵本、どこにもヴァージニア・ウルフへのオマージュだなんて書いてない。かくれんぼみたいで素敵だ。


読了日:10月20日 著者:キョウ・マクレア
浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち感想
昔、自分が浮浪児であったことをうまく話すことができず、黙ってしまう人もいる。つれあいにも、子どもたちにも話したことはないのだという。だけど、この人たちは父や母になり、祖父や祖母になり、私たちの暮らしを築いてきた人たちなのだ。じぶんたちを見捨てた国の街路でともに暮らした友の死を悼み、生き抜き、平和な日本を築いてきた人たちなのだ。


読了日:10月19日 著者:石井 光太
運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス)運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス)感想
帯(裏)に書かれた数行の言葉が、第一部のストーリーを大雑把に要約している。第一部は夫視点の物語だが、物語の周辺の人々の思わせぶりなそぶりや沈黙が「何かある」と感じさせる。第二部、妻視点で描かれる同じストーリーは、第一部の景色を塗り替える。読み終えて、見えない第三部が現れることを感じる。それは「Yes」から始まるはずだ。



読了日:10月17日 著者:ローレン グロフ
死都ブリュージュ (岩波文庫)死都ブリュージュ (岩波文庫)感想
貞淑な妻を称えるユーグの言葉は不快。自分にとっての好ましい狭い部分以外認めなたくなかったのじゃないか、と思うほど。二人の女の極端なくらいの正反対ぶり。二人合わせてやっと一つの完成体のよう。ジャーヌと彼が会ったたのは、ブリュージュの町。ジャーヌを彼に紹介したのはブリュージュ君、ということかも。ブリュージュが灰色の町だって? なんと複雑な色合いの灰色だろう。



読了日:10月12日 著者:G. ローデンバック
わたしがいどんだ戦い 1939年わたしがいどんだ戦い 1939年感想
原題は“The WarThat Saved My Life”戦争が、虐待されている子どもを解放することになるとは、なんという皮肉。マゴリアン『おやすみなさい、トムさん』にちょっと似ていると思ったが、こちらの物語では、エイダに手を貸す(?)人たち・動物はあくまでも脇役で、エイダ自身が自分の力で自分の人生を勝ち取る物語。まさに『わたしがいどんだ戦い』



読了日:10月09日 著者:キンバリー・ブルベイカー ブラッドリー
100時間の夜 (文学の森)100時間の夜 (文学の森)感想
なくても生きていけるものを、なければ生きていけないようにさせられている暮らしは窮屈だ。僅かな便利さとともに差し出されるのは大きな不安。否応なしにそうしたものをまるごとなくした時に感じる爽快感。(多くの命が奪われたこの時に味わうことに複雑な思いはあるが)この爽快感は外側の物質的なものだけではなく、内側にも浸透してくるようだ。

読了日:10月03日 著者:アンナ ウォルツ

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