6月の読書

6月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1708

八月の光 失われた声に耳をすませて (創作児童読物)八月の光 失われた声に耳をすませて (創作児童読物)感想
見ないようにしてきたものにいきなり肩をつかまれそうな今、何ができるだろうかと思う。『八重ねえちゃん』の「素朴だけれど正直な人が…」と「帰ってきてほしい」とが、合わさって耳に残る。炎の中に舞う銀杏の形の鶴、翌年の赤いカンナの花が、鮮やかによみがえる。むごい物語であるはずだが、凛と美しい作品集だ。


読了日:06月29日 著者:朽木 祥
ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)感想
子どもが日本語を習得する過程の不思議でかわいい言葉の使い方には、意味があった。一つの言語を身につけていくという事は、確かに冒険と感じている。いま、何も不自由なく使いこなしている私たちだって、無我夢中で冒険してきたわけか、と思うとなんだかしみじみしてしまう。日本語(言語)そのものが、長い時間をかけ、しなやかに変化してきた(いく)冒険者と思えてくる。

読了日:06月21日 著者:広瀬 友紀
キス (新潮クレスト・ブックス)キス (新潮クレスト・ブックス)感想
「わたし」にとって、父との禁じられた「愛」と被支配の日々は、ずっと求め続けていた母への愛情と、それを与えられなかったことへの怒りの奔流のようだ。自分自身を罰するための激しい苦行のようにも思える。静かな文章から、激しいエネルギーがふつふつと湧いてくる感じ。この作品が、一つの終わり(=始まり)によって閉じられることを、今はただ喜びたい。



読了日:06月18日 著者:キャスリン ハリソン
鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐感想
物語を読みながら、心に残ったのは、血のつながりもない、民族も依るものもバラバラの人々が身を寄せ合い、家族となっていくこと。人の体のなかでも、社会でも、異質なものと元からいたものは、戦いあい、敵を倒して生き残ろうとする。そうした世界で、「共生」という道を、静かに示してくれた。険しい道を進もうとする若者たちの朗らかさが印象的。心がふわっと躍った。


読了日:06月11日 著者:上橋 菜穂子
鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐感想
黒狼病という字面のせいか、黒死病を思い出す。恐ろしい病と疑心暗鬼と、重い空気のなか、展開が早く、次々に起こること、わかってくること、さらにわからなくなっていくことに、翻弄される前巻。本当は何が起こっているのか、そして、どうなっていくのか、二人の主人公と周りの人びとのその後…大いに気になる。心に残る場面は、トナカイの郷の、平穏な日々。

読了日:06月07日 著者:上橋 菜穂子

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