- 作者: バリー・ライガ,満園真木
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2016/05/12
- メディア: 文庫
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別々の場所で「彼ら」はそれぞれ目をあける。
『さよなら、シリアルキラー』シリーズ(?)の最終巻、はじまる。
三分冊のこの物語、三部作というよりは、一部、二部(上)、二部(下)という感じ。
これは誰かが仕掛けたゲーム。
ジャスパー。
苦境の中で、もがけばもがくほど、ゲームの駒になりきってしまう。抵抗すればするほど、見えない手の意のままに動いてしまっている。
いったい行きつくところはどこなのだろう。彼はどうなってしまうのだろう。
前巻以上に目を離すことができなかった。
猟奇的で残酷な場面が続く物語に、へろへろ。状況を細かく丁寧に描写する作者の筆が恨めしい。
それにもかかわらず、まるで反動みたいに、少年たちのピュアさが際立ち、心に残る。
ジャスパーのスマホの中には、恋人コニー、親友ハウイーとともに屈託なく笑う彼の写真が、
コニーの部屋の鏡には、ジャスパーとコニー二人の笑顔の写真がとめつけてある。
将来何が起こるか、何も知らずに笑っていた幸福な頃の写真。
でも、それは、本当に幸福な頃だっただろうか。
ジャスパーは自分の過去に囚われていたのではなかったか。そして、自分が何ものなのかわからずにいた。
これは、恐ろしい物語だった。凄まじい物語だった。
でも、物語が壮絶であればあるほど、やっぱり彼には、どうしても必要な物語なのだ。自分自身を容認し解放するためには。
言葉にすれば簡単だけれど、それは、失敗すれば、自分が消えるしかない、双方の存在をかけての命がけの戦い。
――あの子はいい子だよ――
どこからでもいい。その言葉をずっと待っていた。