『ラスト・ウィンター・マーダー』 バリー・ライガ

ラスト・ウィンター・マーダー (創元推理文庫)

ラスト・ウィンター・マーダー (創元推理文庫)


別々の場所で「彼ら」はそれぞれ目をあける。
『さよなら、シリアルキラー』シリーズ(?)の最終巻、はじまる。
三分冊のこの物語、三部作というよりは、一部、二部(上)、二部(下)という感じ。


これは誰かが仕掛けたゲーム。
ジャスパー。
苦境の中で、もがけばもがくほど、ゲームの駒になりきってしまう。抵抗すればするほど、見えない手の意のままに動いてしまっている。
いったい行きつくところはどこなのだろう。彼はどうなってしまうのだろう。
前巻以上に目を離すことができなかった。


猟奇的で残酷な場面が続く物語に、へろへろ。状況を細かく丁寧に描写する作者の筆が恨めしい。
それにもかかわらず、まるで反動みたいに、少年たちのピュアさが際立ち、心に残る。


ジャスパーのスマホの中には、恋人コニー、親友ハウイーとともに屈託なく笑う彼の写真が、
コニーの部屋の鏡には、ジャスパーとコニー二人の笑顔の写真がとめつけてある。
将来何が起こるか、何も知らずに笑っていた幸福な頃の写真。
でも、それは、本当に幸福な頃だっただろうか。
ジャスパーは自分の過去に囚われていたのではなかったか。そして、自分が何ものなのかわからずにいた。
これは、恐ろしい物語だった。凄まじい物語だった。
でも、物語が壮絶であればあるほど、やっぱり彼には、どうしても必要な物語なのだ。自分自身を容認し解放するためには。
言葉にすれば簡単だけれど、それは、失敗すれば、自分が消えるしかない、双方の存在をかけての命がけの戦い。


――あの子はいい子だよ――
どこからでもいい。その言葉をずっと待っていた。