『火打ち箱(こんなアンデルセン知ってた?)』 アンデルセン(原作)/赤木かん子(文)/高野文子(ペーパークラフト)

火打ち箱 (こんなアンデルセン知ってた?)

火打ち箱 (こんなアンデルセン知ってた?)


サリー・ガードナー『火打箱』を読み、元はどんな物語だったのだろう、と思いました。
アンデルセンの『火打ち箱』を私は読んだことがなかったのです。


空洞の木、地下の三つの部屋、三頭の不思議な犬に守られた金銀銅貨。魔法の火打ち箱。うつくしいお姫様、予言、危機一髪の大逆転・・・
おもしろい要素はたくさんなのだけれど・・・


『火打ち箱』手強い話でした。
高野文子さんのペーパークラフトのおかげだろうか。立体的なクラフトに当たる光と影が、妖しい雰囲気を盛りあげます。
三匹の犬(サリー・ガートナーのほうは狼だったけれど、犬もかなり恐ろしい)の、大きな目玉が、影の中に浮かび上がり、こちらを照らし出しているようで、ぞくっとする。


主人公の兵隊。
彼は高潔でも正直者でもない。そして、因果応報もない。
迎える大団円は、ハッピーをかすめ取ったハピーエンドという気がして、ちっともハッピーな気がしない。
なぜ、主人公をこういう人物に仕立てたのだろう。


お姫様。こちらも好きになれなかったが、そう思わせられることに、なにか寓意のようなものがあるように感じます。(原作にあるのか、赤木かん子さんの再話にあるのか、わからないのですが)
父王に閉じ込められていることも、目を閉じたまま(眠ったまま)運ばれていくことも、
父親を殺した男の妻になることさえも、まんざらいやそうでもない顔で粛々と受け入れる。
ディストピアの模範的住民のように、幸せな人に思えてくる。


ダークな童話、と思ったけれど、どういう背景で書かれたのか、気になる童話です。