『にっぽんスズメ歳時記』 中野さとる(写真)

にっぽんスズメ歳時記

にっぽんスズメ歳時記


うちのインコが死んだ時、大量に残った餌を、庭に来る鳥たちのために地面に撒いてやったのが始まりで、私は、冬場の鳥たちのエサやりを続けた。
餌をみつけると、屋根の上から、その下の物干しざおの上へ、地面へと、少しずつ近づいてくるスズメたちの様子は、ことに見ていて楽しかった。
さっと飛んでくるのもいれば、仲間たちが食べ終わるころ、注意深くそろそろとおりてくるのもいるし。
けんかっ早いのもいれば、おっとり構えているのもいるし。
いつも餌を撒く私を覚えていて、姿を見ただけで、さあっと舞い降りてきたり。私の顔の前をわざと飛んでみたりする大胆な子もいて、みんなうちの子、と笑ってしまった。
そんなふうにして仲良くなったつもりのスズメたちは、春がくると、ほとんどが挨拶もなくどこかへ行ってしまうのだから、ずいぶん薄情なお友達だったが。


そんなうちの(!)子たちのことを思いながら、この本を手に取る。
よく見ている、よく知っているスズメたち。のつもりでした。
それなのに、四季折々、さまざまな姿のスズメたちの写真を見ていると、その豊かな表情に驚いてしまう。
「スズメたちのドラマを撮りたい」という中野さとるさんの言葉どおり、この本の中のスズメたちはそれぞれのドラマを生きている。
一瞬のしぐさ、一瞬の表情は、その時間の前後、奥行きを想像させる。
光のなかでの小競り合い、羽根を広げて親に餌をねだる子、
換羽ちゅうのからだを足元の切り株に擦り付けての気持ちよさそうな表情、
冬のフェンスの上に並んだスズメたちの中には仲間に身を寄せて居眠り(?)をしている呑気ものもいる。
いいや、本当は呑気なはずがない。厳しい冬を生き延びようとしている彼らスズメたち。
それでも、厳しい表情は見せず、こちらをふと笑顔にさせてしまうような愛嬌のあるしぐさや表情に打たれる。
生きる姿勢みたいなものかしらね、と、小さい彼らに、ぺこり頭をさげる。
よくぞこれだけ集まった!と思うような集合写真(?)のスズメたちも、一羽一羽みんな違う顔をして、みんな違う方角を向いている。
スズメたちの写真はいつまで見ていても見飽きることはない。


添えられたコラムの、善意のひとの(不必要な)野鳥保護が野鳥たちの命を縮めてしまうのだ、という言葉が心に残った。
紹介されていた日本野鳥の会『ヒナとの関わり方がわかるハンドブック』をさっそくダウンロードしました。