『ALDO アルド・わたしだけのひみつのともだち』 ジョン・バーニンガム

アルド・わたしだけのひみつのともだち

アルド・わたしだけのひみつのともだち


『アルド』・・・こういう絵本であったか。
アルドは、「わたし」にしか見えないひみつのともだち。アルドは、ウサギの姿をしている。首にマフラーをまいている。
こまったときにはいつもアルドがきてくれる。ほんとにつらいことがあればいつでもアルドがきてくれる。


「わたし」の日々は、「こまったとき」と「ほんとにつらいこと」ばかりではないだろうか。
玩具はたくさんもっているし、公園に連れていってもらったり、外に食事につれていってもらったりもする。
でも、なぜか、「わたし」はいつもひとりぼっち。友達はあまりいないみたい。そのことに気がついたり心配してくれたりする人もいないよう。
両親(らしき人たち)は細い腺と薄い色で描かれる。「わたし」のほうを向いている姿はない。


画面は、暗い。荒々しく暗い。
ざわざわと不安を掻きたてるように黒っぽい寒色が刷毛跡も生々しく掃かれている。
ところどころ覗く下色(?)の暖色は暖かいというのとは程遠い。冴え冴えと鮮烈で、牙を剥いているように感じる。
背景の暗さ・激しさは、バーニンガムのやり場のない怒りのようだ。こんな背景の中に、子どもをひとり(見えない親友だけを支えに)立たせるしかない怒り。


アルドと「わたし」はぴったり寄り添い合って道を行く。船をこぎ出す。二人は画面の中でなんて小さいのだろう。
「わたし」は、誰にも見えないアルドとしっかりと手をつなぐ。アルドが消えてしまったら、「わたし」はこの画面の中を一人、どうやって歩いてけるだろうか。


「わたし」はきっと必死でアルドを見いだした、呼んだ。アルドはその呼び声に必死に答えてやってきた。
・・・ねえ、アルドがそばにいてくれてよかったね。
そうしてね、いつかそっとアルドが「わたし」のそばを去っていく日がきますように。
「わたし」自身も気がつかないほど、そっと。
遠くで「よかったね」と言いながら、見守ってくれる日がどうかきますように。