『あおのじかん』 イザベル・シムレール

あおのじかん

あおのじかん


「あおのじかん」は、夜が始まる時間。刻々と夜が深まっていく時間。
世界中あらゆるところでの四季折々の夜です。
空の色も水の色も地面の色も、そして空気の色も青いのです。
どのページもずっと青ばかりなのに、豊かな色彩に満たされているのを、色が躍動しているのを、感じます。


昼間のものたちが眠りに落ちる「あおのじかん」は静かだけれど、夜のものたちにとっては、なんて賑やかな静けさなのだろう。
夜の者たちには、夜の者たちだけしか知ることのできない賑わいがあるのだ、きっと。


「あおのじかん」の主役たちは、青い色をした生き物たち。
たとえばホッキョクギツネ、青みがかったネコ。たとえばコバルトヤドクガエル、さまざまな鳥たち。海の底では、ヒョウモンダコウミウシや・・・
なんとたくさんの青い色の生き物たちがいるのだろう。
さまざまな青、様々な質感の青たちが、生命を謳歌しているようだ。始まりかけの夜の、青の中で。


ページを繰るごとに、空の青さがどんどん変わっていく。深まる夜。深まる青。最後にはもう動物たちは黒っぽいシルエットにしか見えない・・・
『おやすみなさい、おつきさま』(マーガレット・ワイズ・ブラウン/クレメント・ハード)を思いだした。うさぎのぼうやが眠りに落ちていくとき、部屋がどんどん暗くなり、かわりに窓の外、月と星の世界がどんどん明るくなっていく、あの美しくて愛らしい絵本。(感想
『あおのじかん』は、もうひとつの「おやすみなさい」の絵本なのだと思う。
わたしも、青に包まれる。夜のしめった青い空気を胸にいっぱい吸いこんでじっとしていよう。