8月の読書

2016年8月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2292ページ

ジャック・デロシュの日記 隠されたホロコースト (海外文学コレクション1)ジャック・デロシュの日記 隠されたホロコースト (海外文学コレクション1)感想
60年前の秘密と、少女の拒食症とを絡み合わせることの意味を最後に知って、彼女の青春時代をたまらない思いで振り返って居る。読み終え、ぼーっとなっている。この重さの正体はいったいなんなのだろう。羞恥心、痛み、怖れ。そして、無力感。『隠されたホロコースト』・・・隠し場所は歴史の中か。地理の中か。記憶の中か。違う。わたし自身の腹の中かもしれない・・・
読了日:8月30日 著者:ジャンモラ
山里に描き暮らす (大人の本棚)山里に描き暮らす (大人の本棚)感想
画家が嘗て、都会を捨ててここへやってきたように、大規模な開発によって消えていった山の草たちも、このアトリエの敷地内を避難所として、自生しているそうだ。アトリエが四季折々のアジ―ル(避難所)になっている、と。私も、渡辺隆次さんの文章に「避難所」を求めていたのかもしれない。この本は渡辺さんのアトリエの佇まいに、きっとよく似ているはずだ。
読了日:8月27日 著者:渡辺隆次
パール街の少年たちパール街の少年たち感想
子どもだけの世界でなければ得られないもの(失うことも含めて)の尊さに、胸が熱くなる。そう思いながら、時々、子どもの戦争があまりにリアルで、本物の軍隊や戦場を彷彿とさせられ、はらはらする。最後まで読んで「ああ」と思う。「愛国心」というものがいかにとらえどころのないものかを、そして、何かに拠っての戦いがいかに虚しいことであるかを、苦くかみしめる。
読了日:8月24日 著者:モルナール・フェレンツ
なんでもない なつの日 「夏の夕ぐれ」なんでもない なつの日 「夏の夕ぐれ」感想
一面の黄色い光に包まれた光景を見ていると、懐かしいような気持ちがわきあがってくる。今日の夏の日、絵本のなかの農園では、本当は、いろいろあったに違いない。うんと忙しかったかもしれないし、びっくりするような問題も起こったかもしれない。それでも、夕焼けに染め上げられながら、穏やかに一日を終える幸せ。なんでもない日はこんなにも美しい。かけがえがない。
読了日:8月21日 著者:ウォルター・デ・ラ・メア
ハイウェイとゴミ溜め 新潮クレストブックスハイウェイとゴミ溜め 新潮クレストブックス感想
熱帯の島にも、アメリカのストリートにも、熱い風が吹いている。決して気持ちのよい匂いなんかない。その道を歩くことしか許されなかったものが、道を押し広げつつ、渡って行く姿が好きだ。その手段の一番大きいものはきっと、彼の中のもっとも柔らかいものだと思うから。巻頭に置かれたグスターヴォ・ペレス・フィルマトの言葉は、作者の思いを代弁しているよう。
読了日:8月17日 著者:ジュノディアズ
レッド・フォックス カナダの森のキツネ物語 (世界傑作童話シリーズ)レッド・フォックス カナダの森のキツネ物語 (世界傑作童話シリーズ)感想
知力・体力ともに群を抜くきつねが次々に襲い掛かる危機をどのように切り抜けていくか、たくさんの見せ場に心躍らせながら、夢中になって読んでいた。森では、誰もかれも、必死で生きている。ある限りの力を尽くして、森の中を生き抜いていこうとしている。その姿に心揺さぶられずにはいられない。豊かな森は「生きろ、生きろ」と歌っているようだ。
読了日:8月15日 著者:チャールズ・G・D・ロバーツ
デミアン (新潮文庫)デミアン (新潮文庫)感想
この本は十代の頃、特別な本だった。何十年ぶり?あの頃この本に感じていた強い光のようなものが、今の私には感じられなくなっていることに気がついて驚いた。寂しかった。シンクレールの心の旅はストイックで、贅肉だらけの今の私は読んでいて少し息苦しい。でも、夢中で読んでいた昔の私に再会できたと思う。出会うべき時に『デミアン』に出会えたことは、幸せだった。
読了日:8月10日 著者:ヘッセ
ちっちゃいさんちっちゃいさん感想
ひとが「ちっちゃいさん」になってこの世に生まれてくること。そして全力で育とうとすること。その姿は、こんなにおかしくてこんなに愛おしいのだ、と気づかせてくれたこと。そのことをじっくりと味わう。そうしたこと全部に、ありがとうと言いたくなる、ちっちゃいさんに。
読了日:8月7日 著者:イソール
獄中からの手紙―― ゾフィー・リープクネヒトへ (大人の本棚)獄中からの手紙―― ゾフィー・リープクネヒトへ (大人の本棚)感想
ドイツ帝国に沈黙させられた革命家の手紙。友へのいたわり、読書のこと、自然の移り変わりの描写。それが監獄で書かれたものとは思えないほどに瑞々しい。美しい。しかし、長きに渡る獄中生活は、もともと病弱だった彼女を病み衰えさせ、黒髪を白髪に変えてしまったという。それだけに、これら美しい手紙の束が、どれほどの精神力から産み出されたものであるか、と思う。
読了日:8月5日 著者:ローザ・ルクセンブルク
宇宙船とカヌー (ちくま文庫)宇宙船とカヌー (ちくま文庫)感想
宇宙をいく巨大な宇宙船を作ろうとした物理学者の父と、海を行く巨大なカヌーを作ろうとした息子。一見全く別の道を歩いているようで、実はよく似た父子。ふたり、別々のやり方で、別々の場所で同じ夢を見ているようだ。二人の夢が美しい(ときどき恐ろしい)。二つの船は重なりつつ、きっと最後まで別の道をいく。それでいいんだ、と気持ちよく。
読了日:8月3日 著者:ケネスブラウワー

読書メーター