6月の読書

2016年6月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2898ページ

ウィリアム・ブレイクのバットウィリアム・ブレイクのバット感想
尊敬する友人が旅先から送ってくれる手紙を一通一通楽しみに読んでいるようだ。ふんだんな挿画はドナルド・エヴァンズの切手つきのカードで、美しい。気さくで愉快な文章で、日々のなかにある芸術の輝きの見つけ方を教えてもらったよう。
読了日:6月29日 著者:平出隆
ブレイクの隣人ブレイクの隣人感想
18世紀末のロンドンにしばし連れていってもらった。子どもたちとあっちの通り、こっちの通りを歩きまわった。「相反する二つの間にあるもの」という言葉。相反するものばかりの町のど真ん中に立つ大きな人は、大きいけれどほとんど見えない。そのような姿にブレイクを描いたのだろう。ジェムの母と姉が作っていたボタンが気になる。どんなものなのだろう、と憧れる。
読了日:6月26日 著者:トレイシーシュヴァリエ
朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ (岩波新書)朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ (岩波新書)感想
植民地の朝鮮の、済州島という島で育ったことは、著者のその後の人生のすべてに影を投げていることを認識しないではいられない。金時鐘の血を吐くような吐露の痛ましさ。ことに言葉と教育に関して、沢山の忘れられない言葉に出会った。恐ろしさに震えながら付箋を貼る。
読了日:6月24日 著者:金時鐘
鳥の会議鳥の会議感想
ひとつの木を出入りし、木の中で鳴く小鳥たちの群れ。その光景を思いうかべるとき、その木は、ぼうっとした明るい光に包まれているのを感じる。そこで何が起こって居ようと、確かに光の手の中に包まれた時間がそこにあるのだ、と思う。不思議だな、と思うけれど、やっぱり光のなかにある。
読了日:6月20日 著者:山下澄人
愛するものたちへ、別れのとき愛するものたちへ、別れのとき感想
ハイチという国がどういう状態にあるのか、そして、亡命を求める人たちをアメリカがどのように扱うのか、あまりに惨たらしい現実を見せつけられるが、そうした、まるで掃きだめのような現実以上のリアルさで、死ぬ運命と誕生させる運命とが螺旋のように巡り、まるで美しい花のようにすっくりと立ちあがる気がする。静かな喜びが湧き上がってくる。
読了日:6月19日 著者:エドウィージ・ダンティカ,EdwidgeDanticat
ピトゥスの動物園ピトゥスの動物園感想
友達を助けるために動物園を作ろう、と子どもたちは決めた。猛獣や珍獣のいる動物園の園長の子どもが、お父さんの動物園ではなくて、「ピトゥスの動物園」に行ってみたいという気持ちが、子どもたちの「動物園」がどういうものであるか表している。「動物園」は、当初計画していたよりも、みんなに大きな宝物をもたらしたような気がする。気持ちのよい風が、駆け抜けていく。
読了日:6月16日 著者:サバスティアスリバス
呪われた腕: ハーディ傑作選 (新潮文庫)呪われた腕: ハーディ傑作選 (新潮文庫)感想
特に善人でも悪人でもない、だれもが多かれ少なかれ持っている、ありふれた感情のかけら。その部分が、いろいろな条件のもと、肥大化してしまう。人の感情って、ちょっと目を離した隙に、こんなに膨れ上がって暴走してしまうものなのか、と驚く。ホラーじゃないのにホラーっぽい一冊を読んでいるうちに、どんどん人が悪くなっていくような気がする。
読了日:6月15日 著者:トマスハーディ
移民たち (ゼーバルト・コレクション)移民たち (ゼーバルト・コレクション)感想
美しい物語。喪失と死がこんなに濃厚に描かれた物語なのに、この美しさ。それは、この本の存在が蝶男そのものだからではないか。わたしはこの本を読みながら蝶男の補蝶網にからめとられているのではないか、そんな気持ちになる。
読了日:6月11日 著者:W・G・ゼーバルト
犬心犬心感想
伊藤比呂美さんの老犬タケの晩年の姿が、熊本で一人老いていく父親に重なる。「老い」に人も犬のない。種を越えて「老」で繋がっているようだ。老いのこと、ペット医療のこと、安楽死のこと、死んでいくこと。まだ元気なほかの犬たちのなかで、どんどん老いていく、そして、死んでいくタケの姿を見ながら、それはもう犬の話ではないのだ、と思った。
読了日:6月8日 著者:伊藤比呂美
あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)感想
爆弾、テロ。戦下に暮らしながら。時々世界のあちこちで反ユダヤの視線にさらされながら、おおらかでシュールな物語を書くケレットの根っこを覗いたような気がする。父が、幼い日にお話を通して息子に伝えたこと。タイで象使いになった兄の歩き方。ポーランドの「僕らの家」のジャム。そして、トリのゲームの意味。などなど・・・
読了日:6月5日 著者:エトガルケレット
愛と障害 (エクス・リブリス)愛と障害 (エクス・リブリス)感想
滑稽で痛い日々の間から見えてくる故国や家族への郷愁、愛情が沁みてくる。少し照れくさそうに(?)語られる文学についての言葉、文学のなかにある「真実」や、作家の(文学への)誠実さに触れたような気がして、はっと居住まいを正したくなる。最後のページを閉じながら、文学の贈り物、ってこういうことかな、と思う。贈り物をもらったような気がする。
読了日:6月2日 著者:アレクサンダル・ヘモン

読書メーター