『ピトゥスの動物園』 サバスティア・スリバス

ピトゥスの動物園

ピトゥスの動物園


11歳のタネットをリーダーにした仲良し六人グループの最年少、ピトゥスが病気になってしまった。
難しい病気で、外国にいかなければ治すことができないが、そのためにはお金がとてもかかるのだ。
下町の大人たちは放っておかない。いろいろとお金を集めるための計画を立て始める。
「ぼくらも何かやらないか? ピトゥスはぼくたちのなかまだもん。おとなの手伝いだけじゃなくてさ、ぼくたちはぼくたちで、何かやってお金を集めようよ」
と、みんなで相談して、動物園を作ることに決めた。街中の子どもたちみんなに呼びかけて。


そんなことができるのだろうか、と不安になってしまうけれど、子どもたちはしりごみなんかしない。
みんなで手分けして着々と計画は実行に移されていく。
計画どおりにいかないことは数知れず、思いがけない事態に驚いたりしながら、本当に動物園は出来上がろうとしている。「ピトゥスの動物園」!
そうした子どもたちのやる気満々に誘われて、読んでいるこちらもわくわくしてくる。
ああ、私が子どもであったなら、ああ、そこに私もいられたら、ああ、仲間に入りたいな。動物園だよ、なんてわくわくするのだろう。


わくわくしているのは、本の外にいる読者だけではもちろんない。
子どもたちのエネルギーに誘われて、大人たち、中学生や高校生たちが、縁の下の力持ち的協力を申し出る。
みんな何かしら協力したい、と思い始めるのだ。
本物の(という言い方は子どもたちに失礼だね)動物園、つまり、猛獣や珍獣のいる動物園の園長さんの子どもが、お父さんの動物園ではなくて、「ピトゥスの動物園」に行ってみたいという気持ちが、子どもたちの「動物園」がどういうものであるか、表している。
「ピトゥスの動物園」は何もないところから、子どもたちが、一つ一つ作り上げてきた動物園なのだ。
そして、たった一日だけの開園、一日だけできれいさっぱりと消えてしまう動物園である、ということもポイントが高い。


「動物園」は、当初計画していたよりも、もっと大きなもの、多くの宝物を、みんなにもたらしたような気がする。
気持ちのよい風が、駆け抜けていく。