4月の読書

2016年4月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2167ページ

テムズ川は見ていたテムズ川は見ていた感想
トントンと音をたててたたみこまれていく終盤を面白く読みながら、似た者同士の二人の大人が気になっている。どちらにも守らなければならない別の「掟」がある。正義感が強く一本気。脇目もふらず、信じるまま一途に駆ける人たちの危うさが心に残る。
読了日:4月27日 著者:レオンガーフィールド
夜と薔薇―森雅之自選作品集夜と薔薇―森雅之自選作品集感想
「僕は手紙のような漫画を書きたい。手紙のように嬉しいものをかきたい」 森さんの手紙はとおくから、空気をつたって、直接胸もとに届く。森さんの手紙は、夕方、明るい星のありかをさししめす指先のようなもの。そのような手紙を、わたしも送れたらいいのに、と思う。夕方の明るい星を指し示す指先に、なれないか、と思う。
読了日:4月22日 著者:森雅之
結婚式のメンバー (新潮文庫)結婚式のメンバー (新潮文庫)感想
ぶざまで恥ずかしい、ひりひりと痛くて苦々しい。一方で、ほとんど美しいといえるくらいの懐かしさを感じるのは、この小説を私も「斜めうしろに何かがあり、左目のぎりぎりの端っこで、それがぱっと輝いた」ようだと思いながら、読んでいるからかな。夏の一日の、時間を追って移り変わる情景の描写が繊細で美しくて、好き。
読了日:4月13日 著者:カーソンマッカラーズ
夜の語り部夜の語り部感想
稀有な語り部サリムはある日、言葉を失ってしまった。サリムは言葉をとりもどすことができるのだろうか。そもそも言葉とは何ものなのか、七人の友人たちによって、様々な方向から、さまざまなおとぎ話を通じ、さまざまな手段で、教えられるようだ。その一文一文が美しい。1950年代のダマスカスの空気と音とを体中で感じつつ、豊かな語り手と聞き手の共演を楽しんだ。
読了日:4月10日 著者:ラフィクシャミ
世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ感想
ムヒカ大統領の訴えはシンプルだ。どの言葉も、その通りだ。「幸せ」をなんて簡単に手放して気がつかずに暮らしていただろう。自分自身の生き方を少しだけ考えなおしてみたい。がつがつした「貧乏」にいつまでもしがみついているのは、いいかげん嫌になっているし。今ほど、そういう「貧乏」が身に沁みる時期はないものね。世界でいちばん豊かな大統領のスピーチだった。
読了日:4月6日 著者:
フラゴナールの婚約者フラゴナールの婚約者感想
心寄せたくなるような魅力的な主人公たちはいないような。ときどき、その自意識の高さに辟易としたり。悲劇的な結末であったとしても、突き放したユーモアも感じる。冷たくはない。チクリと胸に刺さるような何か別のものもあるのだ。『三たびの夏』の「あなたのお好きなものって、女でしょ。そのほかに何がありました?」には、笑って頷く。作者の自伝的な作品集だそうで。
読了日:4月5日 著者:ロジェグルニエ
モンスーンあるいは白いトラモンスーンあるいは白いトラ感想
細分化された階級差のインド。沢山の問いかけ。ひと時、どん底で、階級を越えて、少年たちがともに暮らし旅立っていった。どの人生も前途多難で気が遠くなりそうなのだけれど、それぞれには、自分のやるべき事がしっかりと見えているのがわかる。ここで出会った友人たちの存在が彼らをこれから支え続けるだろうと信じられる。二度と会うことはないかもしれない彼らだけれど。
読了日:4月1日 著者:クラウス・コルドン

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