3月の読書

2016年3月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2835ページ

野うさぎ (岩波現代選書 (97))野うさぎ (岩波現代選書 (97))感想
深く豊かな森が、恐ろしいものに押されてどんどん狭く閉ざされていくのを感じていた。狩られる野うさぎは、人。寓話のようであり、ホラーのような悪夢。この悪夢は、人間が人間のために作り出したもの。それが一番気味悪くて心底おそろしい事だとの再確認。これに似た事・もっと酷い事が嘗て起こったし、この先も? まだ悪夢の続きの中にいる。
読了日:3月28日 著者:R.バーコヴィチ
ももとじん 小さな甲斐犬と耳の聴こえない雑種犬ももとじん 小さな甲斐犬と耳の聴こえない雑種犬感想
ハンデを持った犬。老犬。二頭の犬の姿を追いながら、ひとがわすれてしまっている叡智のようなものに触れて打たれる。誰に教えてもらったわけでも無いのに、あたりまえのように、フォローしあい、ともにいる姿が尊い、と思う。犬は群れで生きる。人も群れで生きる。どうか私たちもあなたたちの仲間でいさせてほしい。
読了日:3月24日 著者:むらかみかづを
ぼくたちの相棒ぼくたちの相棒感想
この本は「文学」・・・であると同時にやっぱり「科学」の本である・・・いやいや、両者にそもそも垣根はないのではないだろうか、と読後の今は思っている。生きていくことも、物語ることも、出会い、別れ、また出会い、これから起こることを楽しみに待つことは、いつも不思議と感動がいっぱいなのだ、と気づかせてくれる。少年たちの、丁寧な歩き方が愛おしい。
読了日:3月23日 著者:ケイト・バンクス,ルパート・シェルドレイク
コドモノセカイコドモノセカイ感想
『王様ネズミ』の笛吹の話に乗って、忘れたかったはずの「子ども時代」のジクジクしたところに、引き戻されるよう気がする作品集。へんてこでどうしようもない一瞬一瞬が、ごろんごろんと手を加えられることもなくそこにあるような。最後に『七人の司書』によって、置き去りにした子ども時代の暗がりを味わいなおして、もう一度、大人に戻るべく送り出されるようだ。
読了日:3月21日 著者:
世界の果てのこどもたち世界の果てのこどもたち感想
「わたしが死んだら、わたしの記憶もみんな消えちゃうでしょ。そうしたらきっとなにもかも、なかったことになる」さらさらとこぼれていく砂を思い浮かべている。こぼれさってなお、残るもの。「待ち望まれて生まれてきたわたし。誰よりも愛されて生まれてきたわたし」「あなたはわたしの宝物」 懸命に生き続ける彼女たちの核には、きっとこの言葉がある。
読了日:3月19日 著者:中脇初枝
翼よ、北に翼よ、北に感想
この旅のあとに夫妻を惨たらしい事件が襲うのだ。そしてこの本の二年後には第二次世界大戦が始まる。なんともやりきれない。この記録がいっそう美しくかけがえがない、とも感じられる。寄港地ごとの忘れられない人びとや出来事の記録には、言葉にする必要もない真心が、あちこちで名もないままに小さな光を放って居る。何と美しいのだろう。
読了日:3月15日 著者:アン・モローリンドバーグ
琥珀のまたたき琥珀のまたたき感想
狂気と妄想、呪縛。本当は恐ろしい物語と思うのに、こんなにも美しく儚く感じられるのは、化石の中の世界だからかも。それも世界一美しい、宝石のような化石のなかに生きたまま閉じ込められて永遠に生きている子どもたちの物語なのだ。外に一歩出たら塵になってきえてしまうものが、今、琥珀色の透明の中で、無邪気に生きていることに、胸が締め付けられるような気がする。
読了日:3月12日 著者:小川洋子
フランドルの四季暦フランドルの四季暦感想
この本は、「覚えている限りでは最も遠い過去に始まり、一九三八年に書き上げたこの本を、私は一生かけて書き継いでいくことになるでしょう」という言葉で締めくくられる。四季の暦を綴ることは終わらないのだ。そして、フランドル地方の四季を、味わいつつ、自分自身の四季をいつのまにか頭の中で綴り始めた私の暦もきっときっと・・・
読了日:3月8日 著者:マリゲヴェルス
神秘列車 (エクス・リブリス)神秘列車 (エクス・リブリス)感想
どの物語からも土の匂いがしてくる。土の中から、なりふりかまわず立ちあがろうとする力強さと、荒っぽいユーモアを感じる。目に見えない霊的な存在と、現世に生きる生臭い人間たちとが、強い糸で結ばれているのを意識する。幻想的で美しい。苦い場面や痛ましい場面も、そっと、大きな手のひらに救い上げるような情けを感じる
読了日:3月6日 著者:甘耀明
ボヴァリー夫人 (新潮文庫)ボヴァリー夫人 (新潮文庫)感想
エンマの内側には嵐が吹き荒れているようだ。恋も贅沢も嵐を鎮めることはできない。どんなにしても鎮めることのできないものだったのではないか。そのように生まれついたことが不幸なのかも。彼女のそうした内側を、誰一人、想像もできなかったことも不幸だったと思う(夫の鈍感さをはじめとして) 彼女は愚かだったと思うけれど、やっぱり彼女の生涯が痛ましくて。
読了日:3月3日 著者:ギュスターヴフローベール

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