12月の読書

2015年12月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3112ページ
ナイス数:231ナイス

村の生きものたち村の生きものたち感想
どこにでもいるおなじみな生き物の話だから、生きもののことを語れば、自然に人の暮らしについて語ることになる。素朴で働き者の村の人びとの姿が見えてくる。助け合って暮らす村の生活のほのぼのとした情景にくすくすと笑うが、本当は、コルホーズによって、村の伝統的な生活は変わってしまったのだ。皮肉やあてこすりの言葉が、やんわりと文章にまざっている。
読了日:12月28日 著者:ワシーリイ・ベローフ
ノエルカノエルカ感想
(再読)ボレイコ家の食卓に、ふと招ばれたくなって。人が集まり賑やかに食卓を囲む場で、「何か寂しさを感じるんだよね」という言葉が沁みてくる。ポーランドの珍しくて美しいクリスマスの祝い方を知るのも楽しい。(このシリーズに出会わせてくれた人に感謝をこめて。今どうしているだろう。今は何を読んでいるのだろう。)
読了日:12月26日 著者:マウゴジャタムシェロヴィチ
子どもはみんな問題児。子どもはみんな問題児。感想
本を読みながら、子育てを振り返って居る。子どもは、不出来な親でも全力で慕ってくれて、愛してくれて、ぐんぐん大きくなって、あっという間に親を置いてきぼりにしてくれた。子どもと楽しむ本の話は楽しい。子どもが本の世界を旅する道連れでいてくれたことに感謝。「子どもを食い物にする産業を野放しにしないで」との言葉には、親たちの苦悩も伝わってくるようで辛い。
読了日:12月23日 著者:中川李枝子
小さな町で (大人の本棚)小さな町で (大人の本棚)感想
なんとなく覚えがあるような光景は毎日どこかでひっきりなしに見られるけれど、起こったその瞬間を取り出して仔細に眺めてみれば、それは、どこにもない一回限りの出来事で、日常は、奇跡的な瞬間の積み重ねだったよ、と思う。そういう短編集。シニカルな描写で、冷めた笑いを誘うものが多い。『火口屋の娘』『老人の死』『お隣同士』など、好き。
読了日:12月22日 著者:シャルル=ルイ・フィリップ
冒険の日々 (小学館文庫)冒険の日々 (小学館文庫)感想
1967年から1970年。なんだかわからない不思議に、ぞっとしながらも、「まあ、いいか」と受け入れたり受け流したりもできたのだろう。そういう子どもの日々。窮屈で、自由で、明るくて暗い、狭くて広い、世界があった。昔も今も、子どもたちは大人の目の届かないところで、彼らだけの大切な何かをはぐくんでいるに違いない。しんどいことも不安なことも含めて。
読了日:12月20日 著者:熊谷達也
テンレの物語テンレの物語感想
ひたすらに家に帰る物語だったと思う。家は入れ物である。魂を入れる入れ物だ。だからどうしても帰らないではいられなかった。家を失うことは、命を失うことに等しいことだったのだ。短期間に何度も変わる国境線は、極めてブラックなユーモアのよう。まるで、森の奥から響く声なき木霊が語る物語のようだった。厳しく激しく限りなく静かな鎮魂の物語だった。
読了日:12月19日 著者:マリオ・リゴーニステルン
タトゥーママタトゥーママ感想
様々な問題を抱えつつ互いを大切に思う、だんごのような三人が、最初は、不安で不安でならなかった。でも、いつでも安心してSOSを発信できる場所があるなら、一人ひとりの声をきちんと拾って呉れる人がいる、と信じられるなら、この親子は、家族としてやっていける。沢山の足りない部分をを突き抜けるような三人三様の輝かしい才能が大きく花開いてほしい、と願う。
読了日:12月18日 著者:ジャクリーンウィルソン
コーカサスの金色の雲 (現代のロシア文学)コーカサスの金色の雲 (現代のロシア文学)感想
強制移住の事を初めて知った。胸を突くような出来事は、嘗て行われたこれ以上のことを浮き彫りにするようだ。そのなかをしたたかに逞しく、そのくせ妙にまっすぐに生きている少年たちが大好きだ。この作品の著者プリスターフキンはロシア人。この作品は映画化されるのだ。チェチェン・イングーシの監督の手によって。それが、物語の外に描かれた微かな希望のように感じる。
読了日:12月16日 著者:アナトーリイ・イグナーチエヴィチプリスターフキン
考えられないこと考えられないこと感想
むき出しの感情も、そのときどきの感覚や思いなども書かれているのに、それらの感情がとても静かに推移していくように感じた。後年になっての冷静な振り返りでもあるのだろうけれど。そして、冷静であればあるほどに、その核のところにある火のようなものを意識する。河野さんのことは、やはり印象的だ。語らなかった理由にも今語る理由にも、相手への誠実さや敬意を感じる。
読了日:12月12日 著者:河野多惠子
俳句の動物たち俳句の動物たち感想
俳句、どう味わったらいいのかわからない私が、動物からなら、すっと入っていけるかな、と手にとった句集です。わたしのようなものでも、なんとなく好き、と思える俳句をたくさんメモすることができた。巻末の坪内稔典×池田澄子の対談のなかで、春と冬の蚊を詠った句が二つあげられていて印象に残った。、不快な奴が季節はずれの句の中では、寂しく哀れな存在だった。
読了日:12月9日 著者:
岬のマヨイガ (文学の扉)岬のマヨイガ (文学の扉)感想
故郷を追われる痛みを人間ではない存在から伝えられた。人にとって何ものであろうとも、彼らにとってそこは唯一の故郷なのだ、と思えば、この平和で美しい風景が、なんだかやりきれない。切って捨ててしまっていい物など本当はないような気もする。「土地」は、不思議な力を持っている。災害は、人の目に見える暮らしと、目に見えない大切なものとを奪ってしまったのかもしれない。
読了日:12月7日 著者:柏葉幸子,さいとうゆきこ
黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)感想
私の持つ価値観、常識は、絶対ではない。少なくとも、この世界では通用しないのだな。「アフリカは、アフリカ自体のために、アフリカ自体として、存在している。ほかのどこにも似ていない」という言葉をゆっくりと味わうように読んだこの一冊。アフリカは、容易に受け入れてはくれないが、ひとたび魅せられれば、きっとずっと追い求めずにいられなくなる世界なのだろう。
読了日:12月4日 著者:リシャルト・カプシチンスキ

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