『村の生きものたち』 ワシーリイ・ベローフ

村の生きものたち

村の生きものたち


犬に猫、馬。ヤギ。ニワトリたち。スズメにカラスやシジュウカラ
どれも、どこの国のどこの農村でも普通にみかけるおなじみの生きものたち。
おなじみなだけに、人間との付き合いも深いのだ。ということは、生きもののことを語れば、自然に人の暮らしについて語ることになる。


馬に乗った郵便配達夫が道に鳥打帽子を落とす。「今おりなくたって、どうせあしたこの道を通るんだ」で、翌日はやっぱり同じ場所にそのまま帽子が落ちているという話。
だれにでも吠え噛みつき癖のある、村中の嫌われものの犬が、もらわれていった自分の子犬に乳をやるために毎日、川を渡って遠くの村に通い続けている話。
仲の悪い二人が、飼い犬の仲介(?)により和解する話。
名もつけてもらえない持て余し物のヤギと屋根とおばあさんの話。


どの話からも、素朴で働き者の村の人びとの姿が見えてくる。
助け合って暮らす村の生活のほのぼのとした情景、だろうか。一見?
しかし、実は、コルホーズによって、村の伝統的な生活は無理やりに曲げられてしまった。
皮肉やあてこすりの言葉が、やんわりと文章にまざっている。
たとえば「ちかごろの牛はみんな大学出よ」は、痛烈な皮肉であった。