- 作者: 船団の会
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2014/05/15
- メディア: 単行本
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動物が詠まれた俳句を集めた句集である。
各動物ごとに、見開き1ページのエッセイを添えて、俳句が五句ほど並ぶ。
『日本の動物たち』『虫たち』など、六つのグループ(?)に分けられているが、その一番最後が『人間たち』になっているのがユニークなところ。
(どこかの動物園で『世界一危険な動物』と看板が掲げられた檻があり、中には鏡がひとつ、こちらに向かって置かれている、という話を思いだした。)
俳句、どこから、どのように味わったらいいのかわからない私が、動物からなら、すうっと入っていけるかな、と手にとった句集です。
わたしのようなものでも、これ好き、と思える俳句をたくさんメモすることができた。
好きな句をほんの少しだけ書き写してみる。
少年が犬に笛聴かせる月夜 (富田木歩)
花びらを背にして泳ぐ河童かな (早瀬淳一)
蒲公英に化けて吹かれる狐の子 (久留島元)
鞍馬夕ぐれ野ねずみ火種を運びをり (若森京子)
糸吐いて星捕まえる黄金蜘蛛 (富沢秀雄)
なぜかここがいいなと人と蜥蜴来て (中原幸子)
あめんぼう水を掴んで瞑想す (北原武巳)
すずめ来てルンバを踊る冬日向 (鶴濱節子)
葉一枚が椋鳥となる魔法の木 (森弘則)
泣きじゃくる赤ん坊薊の花になれ (篠原鳳作)
あめんぼうを漢字で水馬と書くことを初めて知った。姿を見たら、漢字で名前を呼ぼうと思う。好きになる。
エッセイで好きなのは、『犬』と『目白』 どちらも人と犬とが出てくる。犬がそこにいる(いた)ということがなんだか切なくなる。
巻末の、坪内稔典×池田澄子の対談のなかで、蚊を詠った句が二つあげられていた。
本文(?)のなかの『蚊』の章(?)でとりあげられた「蚊」の句よりも、ずっと印象に残った。二つの句は、春と冬の蚊の句。
真夏には苛立たしくて不快なやつだったが、季節はずれとなれば、なんともさびしく哀れに思え、こんなに印象が違うものか、と驚く。
春の夜の蚊よ蚊にさぞや会いたけれ (池田澄子)
冬の蚊のさびしさ大工ヨセフほど (池田澄子)