『たんたのたんけん』 中川李枝子/山脇百合子

たんたのたんけん (新しい日本の幼年童話 1)

たんたのたんけん (新しい日本の幼年童話 1)


たんたのおたんじょうびに届いた手紙は、地図だった。たんけんのちずだ、と、たんたにはすぐわかった。
登れば何でも見える大きな木から始まって、こえなければならない川や、のぼらなければならない山や、動物の形の岩があって、ジャングルがあって・・・
ゴールに何が待って居るかは、着いてみてのお愉しみ。しかも、たんけんの始まりは、ほら、今、自分の立っているこの場所なのだ。


たんたの探検の相棒は、ちっちゃなひょうの子、バリバリ・バリヒ。
子どもの本の中には、子どもたちの仲間に、ときどき人間ではない子がいる。
その子は、ほんとは一人ぼっちで、少し寂しい子なのかもしれない。
どんな姿の子もいっしょになって駆けていく姿をみると、いいものを見ているような気がしてくる。


子どもと楽しんだ本を手に取ると、当時のうちの子の顔や、あれこれの光景が思いだされる。
せっせと地図をかいていたよねえ。
何枚も何枚も描かれたカラフルな地図はクレヨンとサインペンで。
よく遊んだ原っぱや庭の地図なのだけれど、少し大きめの石は、○○岩、と名前がつけられている。ちょっとした空地や、木も、新しい名前をもらっていた。
農協の果物の形のキャンディは、いつも苺のだけが先になくなった。
お手製の地図を片手に、わざわざ道からはずれたところ(土手の斜面)を這い登っていた。
ゴールに何がまっているか、なんて、どうでもよかった。地図に新しい目印を書きこみながら、あちこちに鼻をつっこむのが、あの子の探検だった。
地図の上では、よく知って居るはずの小さな世界が、不思議の国に変わっていく。
私はそれを眺めるのが大好きだった。