『アンドルーのひみつきち』 ドリス・バーン

アンドルーのひみつきち

アンドルーのひみつきち


アンドルーは、姉二人、弟二人の五人きょうだいのまんなか。
忙しい兄弟や両親たちに囲まれて、アンドルーはひとりぼっちだけれど、ちっとも寂しくない。
アンドルーの得意はものづくり。
・・・と一口にいうけれど、このものづくりのグレードの高さに驚いてしまう。
どこの家にも(たぶんこの村のどこの家にも)ありそうな道具を組み合わせて作るヘリコプターやメリーゴーラウンドなどなど・・・
何を重ねてどういう仕組みで動いているのか、とじっくりと細部を眺めてしまう。
あれがこうなって、と、部品(?)から部品(?)を辿っていき、ひとつ仕組みがわかるたびに、ほおっと感心し、うれしくなってしまう。
ミステリの謎解きに似ている。なんとわくわくすることか!
しかし、一緒に暮らす家族たちは全然わくわくしないみたい。
怒っている。それもわかる。頼みもしないのに、こんなごつい大物を、自分の領域にどーんと設置してもらっては迷惑でしかないもの。


そこでアンドルーは必要な道具を集めて、家を出て、歩きに歩いて辿りついた原っぱに自分だけの秘密基地を作るのだ。
家であれこれのすごい道具を作りまくったアンドルーだから、こんなすてきな秘密基地を作ることも朝飯前なのだ(絵本だからこその楽しみでもあるし。ね)
とんぼの発着場まである。


続々とやってくる、家に見切りをつけた子どもたちのために、その子たちに相応しい秘密基地を次々に作ってやる。
これ、ヒミツキチ図鑑みたいで、ほんとに楽しい。
木の上の秘密基地、巣箱つき。
橋の上の秘密基地、船着き場つき。
お堀のある秘密基地、はねばしつき。
地面の下の秘密基地、ペットたちの巣穴つき。
・・・・・
個性的な秘密基地が、合計九つもあるのだ。
どの秘密基地を覗いても、いろいろな工夫があって、小さくて快適で、隅から隅まで眺めてしまう。どこから入って、どこで寝るの、ときょろきょろしてしまう。


けれども、やっぱり親たちは心配する。子どもたちが帰ってこなければ。(子どもたちだって、ほんとはずっとひとりでいたいわけではない)
おさまるところにおさまって、家族と子どもとが互いに歩み寄る感じだろうか。
成長した、ともいえるのかもしれない。
ひとりでいられる場所、自分の好きなこと・得意なことを、本当に人の役に立つことに繋げることができるようになったなら、それは幸福なことだと思うけれど、
やっぱりちょっと残念な気持ちが・・・
あのわけのわからない発明品たちのダイナミックさ、わくわくする秘密基地たちに比べたら・・・
人の役にたつものをつくるのは、ちょっとだけつまらない。もったいない。ような気がする。