3月の読書

2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:1770ページ

舟を編む舟を編む感想
多くの人たちが様々な方向からかかわりつつ、少しずつ舟の形が現れてくるのを見ているのは楽しいものだ。そして、辞書は美しかった。美しい、と思うのは、ここまでに関わってきた人びとの物語が編み込まれているから。長い間ずっと手もとにあった辞書を美しい、と思って眺めたことがなかったことを申し訳なく思っている。
読了日:3月27日 著者:三浦しをん
わんわん村のおはなし (福音館創作童話シリーズ)わんわん村のおはなし (福音館創作童話シリーズ)感想
もこもこの子犬たちが走り回ると原っぱが緑のストライプ模様になる。探偵訓練もドレミファソソソーのおけいこも、穴掘り原っぱの遊びと大して変わらなくて、みんながわいわいとやっているうちに一日一日がお祭りみたいに過ぎていく。そういう日々の中で結構深刻な事件も知らないうちに解決してしまったりして。素敵なパワー。
読了日:3月20日 著者:中川李枝子
ほとんど記憶のない女 (白水Uブックス)ほとんど記憶のない女 (白水Uブックス)感想
わかろうという努力はさっさと放棄して、次々、51篇。ふわふわとした感覚だけになって、物語の波にのったり、おぼれてアップアップしたりすることを楽しんでいた。冷たい笑を誘うような作品もあったけれど、むしろ心細くなってしまう感じが、ぞっとするよりもずっとよかった。
読了日:3月20日 著者:リディアデイヴィス
希望の牧場 (いのちのえほん23)希望の牧場 (いのちのえほん23)感想
意味なんか考える必要のなかった平凡な生活を、今は考え、黙々と(でも必死で)維持していくのは決して平凡なんかじゃない。こんなにも尊くて重い。当たり前が当たり前じゃなくなった時代に希望が生まれてくるとしたら、それでも「当たり前」を黙々と続けていこうとする人がいる所なんじゃないだろうか。ここでもどこでも。
読了日:3月16日 著者:森絵都
北斎と応為 下北斎と応為 下感想
この知っていそうで知らない世界はなんと溌剌としているのだろう。不自由さを嘆き、憤り、迫害に負け、諦め、くじけ…でも何度でも、地の底から明るいものが湧き上がってくる。不自由な時代に、心の自由さを謳いあげる女たちに快哉を叫びたい。北斎のとらえどころのなさが幻のようで、応為の存在感がずっしりと確かになる。
読了日:3月14日 著者:キャサリン・ゴヴィエ
北斎と応為 上北斎と応為 上感想
本の中は盛んなお祭。賑いにそれっと乗りこみたい気持ちはあるのだけれど、その一方で無粋に醒めている。という感じで上巻を読み終えてしまって、今ちょっと焦っているところ。まだまだわかりません。下巻へ。
読了日:3月8日 著者:キャサリン・ゴヴィエ
トリ・サムサ・ヘッチャラ―あるペンギンのだいそれた陰謀トリ・サムサ・ヘッチャラ―あるペンギンのだいそれた陰謀感想
少年が旅に出た目的は、ただ文句を言いに行くこと。雪と氷の町に紙ふぶきを撒く変なペンギン。小さい人(?)たちの思いがけない動機で、果敢に世界はまわっていく。季節が移り変わっていく仕組みはおおらかで美しい。一方で、ちまっとしたちゃっかりさ加減に、おやまあ、とあきれつつ、からからっとと笑っちゃう。
読了日:3月6日 著者:ゾランドヴェンカー
家族を駆け抜けて (カナダの文学)家族を駆け抜けて (カナダの文学)感想
夜明け前、熱に浮かされるように語られる物語は、まるで千夜一夜物語のようでもあるし、一種のマジックリアリズムのようでもある。ほんとうのことなの、いつのことなの、夢なの、と問うのはよそう。ただ、語り部の語るまま、抒情的な文章の波に、心地よく身を委ねている。
読了日:3月4日 著者:マイケルオンダーチェ
潟湖(ラグーン) (エクス・リブリス・クラシックス)潟湖(ラグーン) (エクス・リブリス・クラシックス)感想
物語は、清潔なくらいに美しい絵になろうとしている。でも、少女に取りついているのは冷たい死。忘れるために彼女が縋り付くのは狂気だろうか。それは明るくみえる、でも救われることはない。微妙に姿を変えて、繰り返す波のように、物語が打ち寄せてくる。ずっと打ち寄せてくる。
読了日:3月2日 著者:ジャネット・フレイム

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