2月の読書

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2556ページ

犬が星見た―ロシア旅行 (中公文庫)犬が星見た―ロシア旅行 (中公文庫)感想
「やいポチ」など言うような奴は怪獣かと思うが、実はかわいらしい男の子。(となりのますだくん』思いだして)。おかげで私も男の子たちに出会えた。そう思わせてくれる百合子さんの凄さ、固いバリヤーをすうっと通過して奥にある見えない本質にそっと触る光のようなものなんだろうか。豪快で繊細な美しい旅日記。
読了日:2月27日 著者:武田百合子
読む時間読む時間感想
その一瞬、間違いなくこの人は、ここではないどこかにいるのだろう。身体だけをここに置き去りにして。その姿は周囲の風景まで巻き込んでこんなに愛おしくてこんなに美しい。時代も国も民族も宗教も超えて・・・私はたぶん、この人たちと同じ時間を共有することができる。その嬉しさ。喜び。なんて美しい写真集だろう。
読了日:2月26日 著者:アンドレ・ケルテス
七人のおば (創元推理文庫)七人のおば (創元推理文庫)感想
大体本当に事件があったかどうか、ということからわからない。そのうちスキャンダラスな話、個性的すぎる登場人物に、これは喜劇かな、と思い始める。家族の先行きを気にしているうちに、え、もう終盤。そうだ、ミステリだよね。夜を徹して語られる思い出話に、犯人と被害者の名前、犯人の動機が隠されている。
読了日:2月24日 著者:パット・マガー
ポケットに物語を入れてポケットに物語を入れて感想
この本で取り上げられているのは、ほとんど読んだことのない作品なのだけれど、それらを知らなくても、読むことを愛する者として共感できる、あるいは敬意を持って受け止められるたくさんの言葉に出会った。角田光代さんの豊穣(の一部)を見せてもらって、それがとても好きだ、と思った。
読了日:2月21日 著者:角田光代
ルゥルゥおはなししてルゥルゥおはなしして感想
ルゥルゥ自身がたっぷりお話を聞かせてもらって大きくなったんだろうね。お人形たちのわくわくやどきどきは、全部ルゥルゥ自身が経験したことなんだろう。のびやかにお話を広げていくルゥルゥと、それを楽しみにしているお人形たちを眺めながら、幸福な子ども部屋の光景にほのぼのしてしまう。
読了日:2月18日 著者:たかどのほうこ
黒ヶ丘の上で黒ヶ丘の上で感想
物語が、大きな地図に変わっていくのを眺めているような気がした。その軌跡がだれにも見えなくても確かな地図を形作っている。春夏秋冬、朝昼晩、同じ風景を眺めながら暮らし、何度も奪われ、打ちのめされた彼らの人生は、やはり旅と呼ぶのが相応しい。変わっていく価値観の中にただ懐かしい、と思いだすいくつもの顔がある。
読了日:2月15日 著者:ブルース・チャトウィン
おやすみなさいおつきさま (評論社の児童図書館・絵本の部屋)おやすみなさいおつきさま (評論社の児童図書館・絵本の部屋)感想
ドナヒュー『部屋』を読んでいたら、この絵本が恋しくなって。昔、この絵本が好きだった子は、周りを見まわしながら「おやすみ、おへや」「おやすみ、絵本」「おやすみ、クッション」「おやすみ、ハンガー」…とゲームのように次々。目は冴え冴え、到底眠りに落ちるどころではなかったことなども懐かしい思い出。
読了日:2月13日 著者:マーガレット・ワイズ・ブラウン
部屋 下・アウトサイド (講談社文庫)部屋 下・アウトサイド (講談社文庫)感想
「いろいろな人がいろいろな状況で閉じ込められている」との言葉が印象的。意識しないまま何度も脱出を繰り返して生きていることもある。『おやすみなさい おつきさま』では、自分が眠りにつくための「おやすみなさい」。でも今、彼は周囲を眠らせるための「おやすみなさい」を、大きな覚悟をもって告げる。感無量。
読了日:2月12日 著者:エマ・ドナヒュー
部屋 上・インサイド (講談社文庫)部屋 上・インサイド (講談社文庫)感想
坊やが語る5歳らしいリアルに微笑んでしまう。しかし…。状況は段々わかってくるが、彼の「あたりまえ」彼の「世界」は、恐ろしくショッキングだった。そして自然に彼の母に思いを馳せずにいられなくなる。三章目で一気に張り詰める。夢中で読んでいる。ああ…。でもね、まだ半分。これで半分。その後が始まるんだ。下巻へ。
読了日:2月9日 著者:エマ・ドナヒュー
ゆうぐれゆうぐれ感想
ゆうぐれ、美しい夜を待つ楽しみの中にふと寂しさが忍び込む。ひとつひとつ点っていく街灯が寂しさを溶かしていく。この特別な日のゆうがた、だれかのために灯りを掲げられるって喜ばしいものだ。美しいものだ。ゆっくりと散歩していた二人と一匹も、何か特別な存在に思えてくる。もしかしたら、彼らは天使かもしれない。
読了日:2月6日 著者:ユリ・シュルヴイッツ,さくまゆみこ
死者たちの七日間死者たちの七日間感想
どん底の人びと。死んでしまってもなお逞しい彼ら。孤独で過酷だった人生、その死はあまりにも悲しすぎる。しかし、悲しみの中にあってなお不思議な楽天的な要素が輝いているような気がする。何がエネルギー源になって彼らの生と死とを輝かせているのだろうと思う時、「現代社会の諸問題」は、ただバカバカしい茶番になる。
読了日:2月4日 著者:余華

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