11月の読書

2014年11月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2422ページ
ナイス数:233ナイス

フラッシュ―或る伝記フラッシュ―或る伝記感想
最初はさっぱり見えなかったものが、闇に目が慣れるにしたがって、ぼんやりと輪郭が見えてくるような感じの伝記。何しろ、犬の目を通して描かれているのだから。エリザベスの伝記、と考えるよりも、愛犬フラッシュそのものの一生に興味を持った私には、フラッシュの中にエリザベスがいる、と思うことで彼女を感じていた。
読了日:11月29日 著者:ヴァージニアウルフ
ぼくはアメリカを学んだ (岩波ジュニア新書)ぼくはアメリカを学んだ (岩波ジュニア新書)感想
底辺の人々を踏みつけてのし歩く人間たちの巨大な闇。その闇をみてみぬふりをするさらに大きな闇。押しつぶされかけながら、精一杯に生きようとあがく人びとの命は確かに輝いてみえる。著者が見たのは、「辺境」「どん底」から見たアメリカ。でも「辺境」はとてつもなく広い。そして思っていたよりずっと強靭だった。
読了日:11月27日 著者:鎌田遵
遁走状態 (新潮クレスト・ブックス)遁走状態 (新潮クレスト・ブックス)感想
これら狂気や恐怖は、よく知っている日常の隣にある。何かのはずみで半歩よろけたら、そこに足を踏み込んでしまいそうな、そういう恐ろしさ。そういうものがあることは、本当は前から知っていたんだよね。見ないように気を付けていただけかも。それに気がついてしまう怖さ、居心地の悪さをじっくりと体験させられてしまった。
読了日:11月23日 著者:ブライアンエヴンソン
ストーナーストーナー感想
生きること、「もういい」と言われるまで生き続けること(偉大でも無く、重大でも無く、名声とも遠く)の尊さ(?)が静かにしみてくる。失意に座りこむこともあるが、生涯消えることのない灯りがいよいよ美しい。ストーナーとともに生きる名もなき人たちはきっと無数にいる、と思えば、じわじわと勇気が湧いてくる。
読了日:11月20日 著者:ジョン・ウィリアムズ
いまファンタジーにできることいまファンタジーにできること感想
ファンタジーを読むことは、現実からの逃避の手段であるはずがない。ファンタジーは他の文学に劣るものではない。この本を読むほどにジャンルを超えたあらゆる本たちに共通することの多さに驚く。物語の真価を見極められる読者でありたい。読み返すたびに世界が豊穣に広がっていくような本と出会う喜びを大切にしたい。
読了日:11月17日 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン
3びきのかわいいオオカミ3びきのかわいいオオカミ感想
ぶたとおおかみが入れ替わったくらいで喜ぶのは早かった。なんとなく囚われものの価値観から放たれたような気になるが、どうしてこうまでになったのかな、と思うのだ。人の話や、見せかけに囚われて、考えることはあとまわし。3びきのオオカミたち、かわいくてさ。いらいらするくらいの天然アホウ面に見えてきます。
読了日:11月16日 著者:ユージーントリビザス
イタリアの引き出し (FIGARO BOOKS)イタリアの引き出し (FIGARO BOOKS)感想
移り変わっていく風景と生活の中の一瞬のきらめきの切り抜き帳のような本。ちっとも気取っていない。そして、たとえば、いつ訪れても黙ってご飯を食べさせてくれる友人みたいな本だ。沢山の景色のなかを通り過ぎながら、すこし元気になって微笑む。そういう景色・場面にいっぱい出会えた。よい顔の人たちとすれ違いました。
読了日:11月12日 著者:内田洋子
野生の樹木園野生の樹木園感想
野生の樹木園は、嘗て激戦地だった。第二次大戦の後、作者はここに帰ってきた。一度破壊された森は元には戻らない。この樹木園も、作者が生涯をかけて育て上げたもの。一本一本の樹に物語がある。木々が何かを語るわけではない。でも木々の声を期待して待ってしまう。畏敬を込めて。本から聞こえる静けさに耳をすましている。
読了日:11月8日 著者:マーリオ・リゴーニ・ステルン
天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編 (新潮文庫)天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編 (新潮文庫)感想
最後にやっと訪れた平和な光景があまりに美しくて、そんなにすぐ、終わりにしないで、と思う。「生の営みが死に繋がるふしぎさ」という言葉が心に残る。重なった互いの世界が見えなくなり、バランスが崩れてしまったのだろうか。見えなくても大切なもの、でも形骸化してしまったもの、本の外の私たちの世界にもあるに違いない。
読了日:11月5日 著者:上橋菜穂子
天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編 (新潮文庫)天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編 (新潮文庫)感想
一人でどんなに無理しているか、孤独であるか。だからバルサによりそうチャグムから垣間見える幼さにほっとする。ひりつくような苦しい旅だが、バルサと共にいられたことを良かったと思う。最後にはこみあげてくるものがある。彼は「本当に」大きくなったのだと知る。『ホイ(捨て荷)』が心に強く残っている。愈々最終巻。
読了日:11月3日 著者:上橋菜穂子

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