『天と地の守り人 〈第二部〉カンバル王国編』 上橋菜穂子

天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編 (新潮文庫)

天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編 (新潮文庫)


遠い道を旅してここまで来た・・・
私怨を収めて結び合った手と手。伏して捨てた誇り。
やはり一つの感慨がある。ここまで来たのだという。


バルサより背が高くなったチャグムだけれど、彼の成長はこれまでの物語で確認してきた。
切羽詰った状況でのチャグムの冷静な判断も、バルサを案じ助ける姿も、チャグムならそうするだろう、そう思う姿である。
だから、むしろ、バルサの手の中で、息子のようによりそう、はにかんで幼くさえ見える彼が印象に残る。
どんなに無理していたか。どんなに孤独であったか。どんなにどんなに心細かったことか。
四面楚歌、時間はない、孤独な苦しい旅路に、チャグムがバルサとともにいられたことを本当によかった、と思っている。


最後に、熱いものが喉もとをせりあがってくるような気がした。
それは、バルサの言葉ではないけれど、幼かったチャグムが心身ともに見上げるような若者になったことを感じているから。
「ほんとうに」大きくなったのだ・・・
「ホイ(捨て荷)」に、彼の大きさを感じている。
生まれながらの新ヨゴ皇国の皇族、そして皇太子であるチャグムにとってのホイの意味を、あとからじっくりと知りながら・・・。


そして、新しい旅が始まる。大きく動きだした。
夕日を頬に受けて進んでいく雄々しい姿は、新しい冒険の始まり、新しい苦難の始まりだろうか。
いよいよ最後の一冊。