10月の読書

2014年10月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:2942ページ

カモのきょうだいクリとゴマカモのきょうだいクリとゴマ感想
ハイライトはカモの兄弟を自然に返した後かな。人が野生動物に関わる、ということの責任の重さが響いてくるのだ。かわいいね、いい経験したね、ではすまない責任が。最後は共に暮らした家族の巣立ちを紆余曲折の末に見送る人になっていた。元気で。一緒に暮らしてくれてありがとう(それを私にも分けてくれてありがとう)
読了日:10月30日 著者:なかがわちひろ
旅する名前―私のハンメは海を渡ってやってきた旅する名前―私のハンメは海を渡ってやってきた感想
生地である日本にも、国籍のある韓国にも依拠できない。矛盾、理不尽、差別。そんななかで日本語の通名を捨てる。ちゃゆっちゃ。それは、国籍を超えた名前。日本人でもなく、韓国人でもなく、在日でもなく、ひとりの尊い人間として、かけがえのない一人としてこの名を生きていく、という覚悟。なんと眩しい名前だろう。
読了日:10月29日 著者:車育子
天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編 (新潮文庫)天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編 (新潮文庫)感想
背負っているのは重荷じゃなくて、夢なのだと。この期に及んでなお、夢、といえる青年の夢はまっすぐすぎて美しすぎて、危うい。しかし、このどろどろした意地と欲得づくの世界に道を開くことができるものは、やはり純粋で清廉な「夢」しかないのかもしれない。できるのかもしれない。
読了日:10月28日 著者:上橋菜穂子
月とかがり火月とかがり火感想
遠景としての田園風景はただひたすらに美しい。しかし、その風景を細密に見回せば苦しみの光景の寄せ集めなのだけれど。物語は、遠景と近景とを巧に織り交ぜていく。月とかがり火の迷信について、搾取する側がこしらえた作り話では終わらない、百姓は土について誰よりもよく知っている、という言葉が印象に残る。
読了日:10月25日 著者:チェーザレパヴェーゼ
カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想感想
近頃のイタリアは愛金主義に満ちた風潮になっている、という。そのために生まれる新しいみじめさ、卑屈さ。よそ事ではない。そのなかで、探し出されたひとこまひとこまの小さな花。人は生きていく。懸命に生きている人たちの中に、それぞれ形が違う、その由来も違う、小さな光を放つ花が咲いているようだ。
読了日:10月22日 著者:内田洋子
ねこのセーター (学研おはなし絵本)ねこのセーター (学研おはなし絵本)感想
自分で自分をもてあましてしまうくらいにどうしようもないねこ。でも、朝ごはんを食べながら「よい てんきだね」と言う。今日もまた着るぼろぼろのセーターが気に入っている。何を大切にして、一日のどの時間が好きで、どんな時に幸せと感じるか。きっと、みんなちがう。そんなに悪い暮らしではない。情けない顔が愛おしい。
読了日:10月21日 著者:おいかわけんじ,たけうちまゆこ
徘徊タクシー徘徊タクシー感想
何しろ次元を超える。空間も時間も超えられるのだ。三次元の、よく知っている道を走りながら。そんな不思議な旅ができる。相手のため、というより、面白がりの自分のためかも。認知症と健常者、という話だけではない。何かを決めつけたり、思いこみに閉じ込められたりしたら、つまらないね損だねと、周りを横目で見まわしている。
読了日:10月16日 著者:坂口恭平
パタゴニア・エキスプレス (文学の冒険シリーズ)パタゴニア・エキスプレス (文学の冒険シリーズ)感想
「どこでもない場所への旅」から始まった「ぼく」の旅。「どこでもない場所への旅」から始まったにもかかわらず、この本は、政治的にも思想的にも具体的にどうこう、という話にはならない、そのかわりにそれ以上のものになる。それは、約束の地マルトスへ最短距離では行かない理由、最後の一文に続く余韻の理由でもあると思う。
読了日:10月14日 著者:ルイスセプルベダ
蒼路の旅人 (新潮文庫)蒼路の旅人 (新潮文庫)感想
巻を追うごとに地図は広がる。絶対絶命の危機を前に、小国の皇太子のチャグムの小ささを思う。けれども、彼は、追い詰められれば追いつめられるほど、大きくなるようなのだ。何度も何度も驚かされる。けれども、こういう成長は、成長しつつ別の部分で血を流しながら身を削っているようで、痛々しすぎる。
読了日:10月12日 著者:上橋菜穂子
佐々木邦 心の歴史 (大人の本棚)佐々木邦 心の歴史 (大人の本棚)感想
人と出あい、関わり、別れ、その再現のないつながりのなかで私も生きている。たくさんの誤解、思いこみの連続でもあった。それでも、好意と懐かしさで思いだせる多くの顔があることは幸せだ、と思う。
読了日:10月9日 著者:佐々木邦
ライオンの皮をまとって (フィクションの楽しみ)ライオンの皮をまとって (フィクションの楽しみ)感想
始まりは少年時代。美しい、あまりに厳しい暮らしなのだけれど、牧歌的で明るい輝きがあるあの日々。それが物語の波の間に間に見え隠れする。見失いそうになるその日々が鮮明によみがえってくる。人は旅を続けなければならない。その途上でだれかかけがえのない人の人生の礎になったりもするのだろう。
読了日:10月6日 著者:マイケルオンダーチェ
かばんかばん感想
ドヴラートフが故国ソ連を出国するときに持って出たのはスーツケース一つだけ。そこから現れた物たちは物にすぎない、でも、物は、人のぬくもりと声とをとどめる。作者の魂のありかを示す。故国と人びとへの愛、慈しみが、このでたらめでいい加減な日々と、物(作者以外の人にはきっとガラクタ)たちの間から、浮かび上がる。
読了日:10月2日 著者:セルゲイ・ドナートヴィチドヴラートフ

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