- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/07/28
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今度はロタ王国。
大きな舞台、そして、大きな展開に、何度も驚かされた。
「王国全体に関わる遊戯盤をながめて駒を動かす」という人間が出てきた。
鷹に魂を乗せて上空から下界を見はるかす呪術師も出てきた。
わたしは、時々、はるか上空からこの国の様子を眺めさせられた。ほとんど靄がかかっているような感じだったけれど。
ものすごく危うい基盤の上で、王国が今にも倒れそうに揺らいでいる。どこかの方角からちょっとでも余計な力がかかればたちまち崩れ去ってしまう。
誰もが、守ろうとしている。なんとかしなければならないのはわかっている。
でも、その拠るところが違うから、ますます対立を深める。
歴史は作られる。信じたいようにつくりかえられていく。
同じ国の歴史、出来事の意味が、伝え方によって、価値観によって、どのようにも変わっていくことを半ば皮肉な気持ち、半ば寒々とした気持ちで眺めている。
王国のバランスは微妙だ。
そして、抱える問題をひとつずつ眺めてみれば、それは他人事ではなかった。
そして、一気に解決することなんてできないのだな。できる、と思うこと自体が単純で無謀なのだろう。
たわんだ枝は、反動で逆方向へ大きくしなる、という。
でも、今、ことを起こそうとするものたちもまた、無理やり枝をある方向にたわめようとしているのではないか。
それぞれが信念のもとに動いている。
その渦中に投げ込まれ、翻弄される子どもたちが可哀想で仕方がなかった。
印象に残るのは普通の人が普通の人に寄せる好意。
バルサやタンダはもとより、豪商のおばあちゃん、口入屋や情報屋、家族で旅する隊商・・・
それぞれの領分のうちではあるが、精一杯の「もてなし」をしようとする人びとの好意に触れたとき、心温められる。