- 作者: アニー・M.G.シュミット,フィープヴェステンドルプ,Annie M.G. Schmidt,Fiep Westendorp,西村由美
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/06/23
- メディア: 単行本
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イップとヤネケはお隣同士。生け垣をくぐっていったり来たり。
舞台はほとんどお互いの家や庭、その周辺。
大きな事件が起こるわけでもなく、毎日毎日、同じようにお日様がのぼって沈んでの繰り返し。
でも、子どものいる暮らしはなんてまあ、いろいろなことが起こるのだろう。なんて毎日が新しいのだろう。
子育てが終わった私には、二人が引き起こしてくれるあれやこれやが楽しくて楽しくて(一部懐かしくて)しょうがない。
そうして、自分の子育て中を重ねてみる。きりきりしたりいらいらしたりもしたけれど、子どもと一緒に過ごした楽しい時間のことばかりが蘇る。
(子にとってはそうではないようで、強くなった今、あの時のあの言われようは今でも納得できない、と、厳しく詰め寄ってくる ←たいてい親の方は覚えていないこと)
イップとヤネケの両親のゆったりとした子育てが素敵で、ついつい自分もそんな親だったような錯覚に陥っていた。
物語の中の両親たちは、完全に黒子に徹しているのだけれど、それだけに、存在が光るのだ。
子どもたちのおかげで相当変化にとんだ毎日を送っているけれど、おおらかさと機知とで、大いに日々を楽しんでいるように見える。
お話を安心して楽しめるのは、両親の穏やかに安定した見守りがあるからに違いない。
床屋さんがいやで、頭に「しっぽ」をつけたまま逃げ出してしまったり、
おじいちゃんに持っていく林檎はどれがおいしいか、ひとつずつ(!)味見したり、
二人なりに考えて花の種をまこうとしたり、
一枚だけめくる日めくりの次の絵柄を期待して、交代で次々破り取ってしまったり。
オランダの珍しいおやつや、庭先に現れるハリネズミ、お誕生日の飾りつけ。
ドアを開けて入ってくるシンタクロースとお供のマックス。
オランダの、子どものいる暮らしの一部をあちこちから覗く楽しみも魅力的。
そういういろいろが全部合わさって、この平和な喜ばしい世界ができあがっている。