8月の読書

2014年8月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4141ページ

もっとにぎやかな外国語の世界 (白水Uブックス)もっとにぎやかな外国語の世界 (白水Uブックス)感想
さまざまな外国語と、わかる・使うを除外して出会った。(そして出会い直した。)その言葉を話す国の話、日本語の話。そして、消えていった言葉の話。言葉の海でのびのびと遊ぶ楽しさ。自然と、それらの言葉を話す人たち、文化、歴史を思い始める。思いは自分の足元から世界の果てまで、現代から大昔まで、行きつ戻りつ。
読了日:8月30日 著者:黒田龍之助
象使いティンの戦争 (金原瑞人選オールタイム・ベストYA)象使いティンの戦争 (金原瑞人選オールタイム・ベストYA)感想
むごたらしい場面がいっぱい出てきたが、それと一対になっておそろしいもの。一つも武器を使わないで人間が別のものに変貌していくこと。(ほんとうだ。ジャングルは人間を変える。戦争は人間を変える。)人びとが虐殺され、日常を奪われ憎しみに囚われていくなかで、象たちの屈託の無さが際立つ。
読了日:8月28日 著者:シンシア・カドハタ
虫とけものと家族たち (中公文庫)虫とけものと家族たち (中公文庫)感想
大切に、一日ほんの数ページずつ…おいしいものをいつまでもとっておくような気持ちで、二か月かけて味わった。こうしていたら、この本を読み終えるころには続編、続々編も復刊します!という嬉しいニュースが聞けるのでは?と思ったけれど、少し早く読み過ぎちゃったみたい。続編の復刊、待っています。ずっと待っています。
読了日:8月27日 著者:ジェラルド・ダレル
夜はライオン夜はライオン感想
とりとめがない会話。でも大切な時間を共有する、少年二人のあの夜がとてもよい。全然爽やかではないし、このあとどうなるかわからない。でもそれでいいんだ。事情も聞かない話さない。互いによりかかり合うことなく二人並んでいる。重たい空気の中で輝いている。(本当は一人踏ん張っているあの子がとても気になるのだけれど)
読了日:8月25日 著者:長薗安浩
夢の守り人 (新潮文庫)夢の守り人 (新潮文庫)感想
夢の囚われ人の見る夢は、きりきりと胸が痛いほどに美しい。あまりに美しくてたまらなくなってしまう。主人公たちの「夢」の対するはっきりしない態度が気になったが、夢って、きっと宙ぶらりんなものだ。夢があれば現実の世界が潤うが、溺れたら恐ろしい。過去を振り返る夢に変わり希望が芽生え始めているような気がする。
読了日:8月24日 著者:上橋菜穂子
闇の守り人 (新潮文庫)闇の守り人 (新潮文庫)感想
闇の豊かさが印象的。互いが命がけで作り上げる槍舞に圧倒される。舞い手であることの、文字通り身を切られる辛さ。けれども、同時に舞い手であることの幸せも感じる。深く相手の(そして自分の)核にまで踏み込むことができる人が羨ましくもある。激しく美しい鎮魂・再生の物語だった。
読了日:8月23日 著者:上橋菜穂子
狼が語る: ネバー・クライ・ウルフ狼が語る: ネバー・クライ・ウルフ感想
読めば読むほど狼がいかに誠実で信頼できる隣人か、と思う。狼について知れば知るほど、見えてくるのは愚かな人間。ことの根っこにあるのは留まることを知らない「欲」だろうか、と思うとやりきれなくなる。この本が、大好きな「ぼくとくらしたフクロウたち」の作者によって書かれたのだと知ったのはうれしいサプライズでした。
読了日:8月20日 著者:ファーリーモウェット
ぼくからみると―どきどきしぜん (かがくのとも傑作集 どきどきしぜん)ぼくからみると―どきどきしぜん (かがくのとも傑作集 どきどきしぜん)感想
いろいろな大きさのいろいろなものが、いろいろな場所から見ている。これ全部おなじひょうたんいけだ。同じ場所が、こんなにも違ってみえる。豊かな生き物たちの世界。なんと豊かなひょうたんいけ。ここに集うものたちを一つも拒まない豊かさ。気持ちがいい。私もここにいる。小さな呼吸の音をさせて、みんなといっしょにいる。
読了日:8月18日 著者:高木仁三郎
八月の六日間八月の六日間感想
これから山に登る人の気持ちは、これから読むはずの本を手に取った時のワクワクする気持ちに似ているかしら、と考えています。「一人で歩くのが好きだ。だが、わたしの心の隣には、ずっとああいう人たちがいるのかも知れない」一人で歩くことは、自分が一人ではないことを確認することでもあったのだ、としみじみと噛みしめます。
読了日:8月17日 著者:北村薫
14歳のX計画14歳のX計画感想
二人の結びつきは、一番感じやすい部分、そして、決して知られたくない部分に、黙ったまま共鳴できたからだろう。救い上げてやろうなんて感じの、上から目線の助けは迷惑だ。ほしかったのは、黙って寄り添い合うもの、対等な関係で共に歩くもの、そうなのだろう。大人には何ができるのだろう、どうすればよかったのだろう。
読了日:8月10日 著者:ジムシェパード
こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)感想
支えつつ支えられる。生かしつつ生かされる。どちらが強者・弱者ということでもなく、どちらが尊いという話ではもちろんなくて、互いに寄り添い合って、必死になって「普通」を支え続けている。
読了日:8月8日 著者:渡辺一史
Nobody's SecretNobody's Secret感想
ディキンソンの詩から始まるミステリ。どんなに押さえつけられても、風のように光のように逃れ出ていく少女の自由さが一面気持ちよくて一面危なっかしい。最初に死んでしまった青年の存在は、最後まで薄れない。でも、どんなに鮮やかでも彼の時は永遠にとまったままであることを確認してしまい、切ない。
読了日:8月7日 著者:MichaelaMacColl
精霊の守り人 (新潮文庫)精霊の守り人 (新潮文庫)感想
懐かしいような異世界だった。チャグムの成長は、不本意な道を歩きださなければならない若者たちへの応援のメッセージのように思えてくる。歴史は勝者によって作られるが敗者によっても作られるのだとしたら、どこの人間の社会に正しい歴史があるのか。でも。歴史は記憶。細々と残そうとする名もない人びとのたくさんの手を思う。
読了日:8月3日 著者:上橋菜穂子
イギリス人の患者 (新潮文庫)イギリス人の患者 (新潮文庫)感想
それがどんなに美しくても「騙し」から生まれたものなら、まやかしだろうか。目が覚めたとき、自分がしゃれこうべの上に座って居ることに気がつく、ということもありなんだ。それでも、本当にそれはまやかしだったのだろうか。戻ることができない嘘の平和の中に、嘘ではないものが生まれたら、それはどうしたらいいだろう。
読了日:8月1日 著者:マイケルオンダーチェ

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