『ナーダという名の少女』 角野栄子

ナーダという名の少女

ナーダという名の少女


ブラジルが舞台の物語。町はもうすぐカルナバル。
空気と人々との熱いエネルギーが行間からあふれてきて、その雰囲気に酔う。
シャカ シャカ シャカ シャ・・・心も体もリズムに乗って、開放的になってくる。
陽気でちょっとおせっかいな隣人たち、危なくて妖しくてでもとびきり魅力的な人たち・・・
その雰囲気の中で少女アリコの静けさ、影の薄さ、生きることへの遠慮は、異質なものがある。
理由があるのだけれど・・・


「世界の始まりへの旅」は戻ることではないのだ、という言葉が心に残ります。
以前読んだ『ラストラン』の、バイクに二人乗りで去っていく「女の子」たちの後ろ姿を思い出していました。
もしかしたら、この世は、わたしたちが考えているよりもずっと賑やかなのかもしれない。
ある日、アリコの目にとびこんできた、図書館の「ドゴン族の神話」の紹介記事の一部、光る星とパートナー闇の星の話も印象的でした。
そして思った。光と闇とが手を携えることで越えられることもあるのだね。開かれるものがあるのだね。
どちらが光、どちらが闇? どちらでもいいのかもしれない。どちらもきっと「コレカラノヒト」なんだ。
シャカ シャカ シャカ シャ…のリズムが心地よい。勇気が湧いてくる。