4月の読書

2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2123ページ

彼の個人的な運命 (創元推理文庫)彼の個人的な運命 (創元推理文庫)感想
「同時に知的な行為と勇敢な行為をして、おまけに女の子を手に入れるなんてことは不可能なのだよ」「それではもはや英雄物語じゃなく三文芝居になっちゃうからだよ」ですって。英雄物語でも三文芝居でもどちらでもいいけど、ボロ館で恋が成就したら、この素敵な均衡は破綻するんじゃないか、と危ぶむ。気の毒だけれど、このままの状態が末永く続いてほしい。
読了日:4月29日 著者:フレッド・ヴァルガス
あのとき、この本あのとき、この本感想
71人ののエッセイを読みながら、目線の高さが著者と同じように感じていた。絵本話だからだと思います。和やかに語り合う場に招かれているみたいで、「ああ、それはわかる、わたしにもよく似た思い出があるの」とか「あら、そんなことが」と、幸福な(そしてちょっと切ないような)懐かしさでいっぱいになっている。「ねえ、私の絵本話も聞いてよ」と言いたくなる。
読了日:4月28日 著者:
遠ざかる景色 (大人の本棚)遠ざかる景色 (大人の本棚)感想
目に見える景色も、人の心の風景も、眺める方角をちょっと変えただけで、ほら、こんなに違って見える。あちこちから眺め、見える景色の印象が増えるごとに、その景色は陰影を増すのだろう。この本のタイトルは『遠ざかる景色』なのに、見たことのない景色、会ったことのない人々が、鮮やかに目の前に現れるのを感じています。
読了日:4月25日 著者:野見山暁治
論理は右手に (創元推理文庫)論理は右手に (創元推理文庫)感想
うまいこと立ち回ることのできない、生き方のへたな人ばかりだねえ。頑固で偏屈。心優しい人たち。類は友を呼ぶのか、似たもの同士は匂いでわかるのだろうか。前面に出てきても出てこなくても、チームとしてとっても素敵だ。彼らの会話をずっと聞いていたくなる。ミステリも物語の筋もどうでもよくなる。犬の落とし物もどうでもよくなる。
読了日:4月21日 著者:フレッドヴァルガス
メアリー・ポピンズとお隣さんメアリー・ポピンズとお隣さん感想
「空き家があるとですよ、近所の人が、みんな思い思いの夢を持ち、気に入った人を勝手にそこに住まわせることができるからですよ」こういう言葉が出てくると、すでに半分「魔法」にかかった気がして嬉しくなる。お隣に引っ越してきた懐かしい(?)人とその連れのお話。すっかりご無沙汰していたメアリー・ポピンズと子どもたち、さくら通りの人たちも変わりなくて、嬉しい。
読了日:4月17日 著者:P.L.トラヴァース
そこに僕らは居合わせた―― 語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶そこに僕らは居合わせた―― 語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶感想
ものすごい勢いで、何もかもが一つの方向に偏っていく時代に、「考える」こと、流れに染まらないようにすることは、とても勇気がいることだ。なぜ普通の人がこんなに浅ましくなれるのかと暗澹とする。20の物語には、どんな時代であれ、自分自身を教育し、理想をゆるがせにしなかった、名もなき人たちが放つ光もまた散りばめられていた。
読了日:4月14日 著者:グードルン・パウゼヴァング
私が学校に行かなかったあの年私が学校に行かなかったあの年感想
色彩も構図も、人も物も動物も、なんて自由でのびやかな絵本なのだろう。みんなで手を取り合って踊っているようだ。そして、見開きにコラージュされた七歳の少女の旅日記。大人の思い出が描いた絵本と、七歳の現代進行形の日記とが、ともに、学校に行かなかった一年がどんなものであったかを語っているよう。こんな日記をかきたくなるような子ども時代があったらいいな。
読了日:4月11日 著者:ジゼルポター
盆栽/木々の私生活 (EXLIBRIS)盆栽/木々の私生活 (EXLIBRIS)感想
人と関わることは、愛することも、家族を作ることも、染みにすぎないのだろうか。自分や他人の存在の確かさが揺らぐ。でも、その染みは、さっさと洗い落としてしまうには、あまりに愛おしいじゃないか。この染みも、そして自分自身も、霧の中に消えてしまうかもしれない。でも、もう少しだけ、この場所に立っていよう、染みを染みのまま、抱きしめていよう。そう思う。
読了日:4月9日 著者:アレハンドロサンブラ
死者を起こせ (創元推理文庫)死者を起こせ (創元推理文庫)感想
個性的な三人+一人の会話が楽しい。三人の学者の優秀さとその暮らしのハチャメチャさのギャップが、元警視の鋭い切れ味と甘さのギャップが、魅力的。次は、誰が何をして、そのおかげで何を引っ張り出してくるのだろう、とわくわくしたり。その面子で動いて大丈夫なのか、とはらはらしたり。すっかりボロ館の住人達の虜になってしまった。
読了日:4月6日 著者:フレッドヴァルガス
百歳日記 (生活人新書 332)百歳日記 (生活人新書 332)感想
限られた空間に暮し、ご自身のことを朗らかに「アルツのハイマちゃん」という。それでも「不思議と感じ方が変わったということはない」と言う。「そのときによって、五感のうちのどこで感じるかが変わっておる」と。詩人は、大切な何かを奪われても、奪われたままの世界で、やっぱり詩人だ。「?」と「!」の話が好き。休み休みの人生を「かれんな」と表現するのもいい。
読了日:4月2日 著者:まど・みちお

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