3月の読書

2014年3月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2550ページ

あひるの手紙 (おはなしみーつけた! シリーズ)あひるの手紙 (おはなしみーつけた! シリーズ)感想
手紙の中には、沢山の気持ちが詰まっている。たった三文字であっても。「にぎやかにわらっているみたい」に始まった手紙は、送る側も受け取る側も、笑顔しか思い浮かばない。読んでいる私も弾んでいる。最後のページをめくりながら、つづきの手紙を一生懸命考えている自分に気がついて、はっとする。手紙の送り手と受け手、先生と児童。どれも素敵な関係だった。
読了日:3月28日 著者:朽木祥・文
マジック・フォー・ビギナーズ (ハヤカワepi文庫)マジック・フォー・ビギナーズ (ハヤカワepi文庫)感想
絶対それおかしいよ、というような事態が、日常のなかにまぎれこんでいる。それなのに、みんな気がつかないの? あっさり受け入れている。それが怖い。そもそも、おかしいのは、あたりまえだと思っていた「日常」のほうなのか。繋がり合っていたはず、愛し合っていた友人たち、家族、その関係が信じられなくなる。人々の重苦しいような孤独(と狂気)が際立つ。
読了日:3月27日 著者:ケリー・リンク
ゾウと旅した戦争の冬ゾウと旅した戦争の冬感想
親子三人、子どものゾウ、敵兵。奇妙なごたまぜ家族を通して、見えてくるものがある。災難をもたらすのは、敵でも味方でもない。敵は「戦争」そのもの。戦争を望む人間たちの創造力の無さなのだ、ということ。家族たちを支えたのは、「戦争」に対して何の責任もないばかりか、その一番の犠牲者であるはずの一番小さな者たちだった、ということを強く意識します。
読了日:3月24日 著者:マイケルモーパーゴ
イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告感想
事実は曲げてはならない。いつの時代どこの国にも、自分の犯した罪から目を背けたい、と願う者たちがいる。まして国・民族をあげて覆い隠そうとするものに対して、それは違う、と言うことは、生半可な勇気ではなかっただろう。さまざまな陳腐さが集結したとき、悪は巨大化する。自分の陳腐さを認めつつ、目を向けるべき方向はどこなのか、と自分に問い続けていきたい。
読了日:3月21日 著者:ハンナ・アーレント
野鴨 (講談社文芸文庫)野鴨 (講談社文芸文庫)感想
「はかなく、取りとめないが、もしもこのうちのひとつでも欠けたら、私はきっと味気なく思ったに違いない」と著者の振り返る日常の物語に、思い出話として顔を出す亡くなった肉親たち。長く会わない知人。幼いころの子どもたち。過ぎてみればだれも覚えていないかもしれない一瞬だけれど、現在に続いている。未来の物語はどこまでもあると感じる。それがいいんだ。
読了日:3月16日 著者:庄野潤三
見習い物語〈下〉 (岩波少年文庫)見習い物語〈下〉 (岩波少年文庫)感想
時には、人を騙したり憎んだりもするけれど、そういう彼らさえも、憎めない。憎めないどころか、彼の中に眠っているもっと別のものにちゃんと目がいく。後ろ盾もなく、大人の中で人生を始めなければならない子どもたちへのおおらかな応援歌のよう。『点灯夫』から現れた光が、希望となって彼らを照らしているよう。下巻では『きたないやつ』『敵』が心に残ります。
読了日:3月14日 著者:レオンガーフィールド
見習い物語〈上〉 (岩波少年文庫)見習い物語〈上〉 (岩波少年文庫)感想
最初の物語から、物語の隅々まで小さな明るい光が飛び散っていったんだな、と上巻を読み終えた今、思っているところ。親方も見習いたちもほんとにいろいろ。起こる出来事も対処の仕方もいろいろ。でも、どれもちゃんと松明の灯りに照らされているよ。『バレンタイン』の「よくなってくる」話にくすくす。墓の下の死者たちも、びっくりして飛び起きそう。
読了日:3月11日 著者:レオンガーフィールド
リハビリの夜 (シリーズ ケアをひらく)リハビリの夜 (シリーズ ケアをひらく)感想
何の気なしに生きてきた自分の傲慢さにまず気がついた。でも、多数派対少数派ではないのだ。ともに不完全な人間同士。互いに補い合い続けなければならない、という気づきにほっとすっる。「他者との関係がほどけ、ていねいに結びなおし、またほどけ、という反復を積み重ねるごとに、関係はより細かく分節化され、深まっていく」 差しのべられた手のような言葉です。
読了日:3月7日 著者:熊谷晋一郎
言葉が立ち上がる時言葉が立ち上がる時感想
別れは、ただ別れていくことではないのだな、と感じた。感性を研ぎ澄ませ、言葉に敏感になり、言葉の奥に分け入ることができるなら。体まで引き裂かれるほどの苦しみ、悲しみを体験しながら、それが、かけがえのない時間=ドラマティックな時間と思えるようになるのだろうか。それは、死と生を超えた(心と体とをつなぐ)「たましい」が顕わになる時なのだろうか。
読了日:3月6日 著者:柳田邦男
少年少女 (1955年) (岩波文庫)少年少女 (1955年) (岩波文庫)感想
ジャクリーヌが愛犬ミローのことで泣いてしまった理由を推し量れる大人はいないんじゃないだろうか。ローズが12−4をすらりと答えられない理由にも、はっとする。ファンションの「昔」には笑ってしまう。子どもは大人とは全く違う生き物なのだ、という事を確認してしまった。とっても愛おしくて少し羨ましい。
読了日:3月5日 著者:アナトール・フランス

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