町かどのジム

町かどのジム (子どもの文学・青い海シリーズ)

町かどのジム (子どもの文学・青い海シリーズ)

  • 作者: エリノアファージョン,エドワードアーディゾーニ,Eleanor Farjeon,Edward Ardizzone,松岡享子
  • 出版社/メーカー: 童話館出版
  • 発売日: 2001/10/01
  • メディア: 単行本
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『ズボン船長さんの話」を読みながら、『町かどのジム』を思いだして、久しぶりに読みました。
老船乗り(ジム)が、小さな男の子(デリー)に、航海時代の不思議な思い出話を語って聞かせる物語、というところが似ているような気がしたのだ。
似ているけれど、やっぱりずいぶん違う。
ジムは、夜どこに帰るのか誰も知らない。日がな一日、町かどの、赤いポストの脇のミカン箱に座っている。春夏秋冬ずっと。
わびしいように見えるけれど、肌はつやつやして、目はいつもきらきらとかがやいているという。
沢山の友だちがいて、デリー少年をはじめとして、この界隈の人みんな、ジムが好きなのだ。ジムを大切に思っているのだ。
ジムが不幸せであるはずがない、と思う。


デリーに語る物語は、荒唐無稽なものばかり。でてくるもの(?)は大きいのや小さいのや、いろいろ。
でも、どれも、温かい。すぐに壊れてしまいそうに繊細に見えるけれど、実はとても強靭で、明るい。そんなお話ばかりなのだ。
お話はジムの目の輝きに似ている。
お話の温かさと、お話の周辺の温かさが、気持ちよい。


ひとの心の奥深く、美しいものに触れたときに、美しい音色を響かす、小さな鈴があるのなら、『町かどのジム』は、小さな風になって、その鈴を触っていくのではないか、と思う。
7歳の子どもにも、50歳の大人にも、同じ音色を響かせてくれる。何度でも何度でも。
いつまでもずっとお話を聞かせてよ、ジム、と思う。