白い人びと (ほか短篇とエッセー)

白い人びと―― ほか短篇とエッセー (大人の本棚)

白い人びと―― ほか短篇とエッセー (大人の本棚)


『白い人びと』
美しい物語であるけれど、その美しさに浸りきることに不安になってしまう。
生きていながら、あまりに「白い人びと」に近づきすぎていること、そちらのほうへ顔を向けすぎていることに、読んでいて、むしろ後ずさりしたくなってしまいました。
訳者あとがきによれば、バーネットは愛する長男ライオネルを15歳で亡くしています。
その悲しみが、この物語を産み出したのでしょうか。
この物語を書きながら、物語に作者が支えられていたのだろうか。この物語そのものが霧の中から現れたバーネットの白い人のような気がする。
主人公イゾベルは、作者のために天から下された巫女のようだ。


ふたつのエッセー『わたしのコマドリくん』と『庭にて』は、まるでもうひとつの『秘密の花園』に迷い込んだような楽しさだった。
コマドリくんとの友情(双方に何の束縛もない、自由な関係)は、そんなこともあるのか、という驚きとともに、羨ましくなってしまった。
クレア・キップス(梨木香歩訳)の『小さなスズメの記録』と重なりました。
『庭にて』は、思い切り庭仕事をしたくなります。庭仕事の魅力や喜びが伝染します。


『気位の高い麦粒の話』
バーネットの二人の子息が、実名で登場しているのが微笑ましい。
どんなにかわいいやんちゃ坊主だったことだろう。
きっと子どもたちをひざ元に呼んで、身近なものたちを題材にして、物語を作っては聞かせたのではないか。
これは、その中の一篇なのではないか、と思った。