引き出しの中の家(ポプラ文庫)


久しぶりに『引き出しの中の家』を読みました。小さな本で読みました。
大好きな本が文庫になりました。
ことにこの本については、大きい本と小さな本があることが、とても相応しいことのように思います。
(花明りもきっと喜んでいるような気がする)
単行本のカバーと表紙のデザインが合わさったような感じの可愛らしいピンクのカバー。
少し大人な文庫本で、単行本のふんだんな挿絵は消えました。
でも、各章題の下に小さなイラストがちょこんと添えられていて愛らしいです。


単行本初読の時の感想はこちらに書いているので、少しだけ、付け足しの感想を書きます。


久しぶりに読みながら、時間の流れを強く感じていました。
第一部と第二部の間に、四十年の歳月が流れていたんだなあ、ということ。
四十年・・・ずいぶんいろいろなことが変わってしまった。
第一部の中で輝いていたものが、第二部では失われていたり、姿を変えてしまっていたり。
時間の流れはなんて残酷なんだろう、変わっていくことはなんて寂しいんだろう。


けれども、ちゃんと次の世代に引き継がれているものもあるのです。
見た目が変わっても中身はいっしょだ、ということもわかってくる。
失われたように見えたものから、新しい芽が出ていたり。

>命が絶えたと思っていたものもこうしてまた受けつがれていくのね。


物語はさらに次の世代につづいていこうとしています。
第一部と第二部の間の変化よりも、もっと大きな変化の兆しも見えています。
どうなっていくのか、誰に何ができるのか・・・
(不穏な動きもあるものの、別の方面から明るい光もちらちら見えている)
だから、信じている。命は繋がっていく。


花明りに会えるのは子ども。
そして、年寄りも子どものうちだ、というのなら、ね、この先、決して若くなることなどない身にとっては朗報だと思いませんか?


最後に蛇足ですが・・・
最後まで読み終えたとき、「あれ? ラストシーンが変わった?」と思った。
あわてて単行本を手許に引き寄せたけれど、変わってはいませんでした。
わたしは、ずっとこの本のラストシーンは「あの人」からの手紙で終わっているように思いこんでいたのです。もうすぐ着く、という。
書かれていない場面、でも待ち望む場面、きっとあるはずの場面が、くっきりはっきりと頭の中に出来上がっていて、本の中に書かれている気になっていたのでした。
でも、きっと! その瞬間をわたしは見たい! ううん、やっぱりすでに見えている^^