5月の読書

2013年5月の読書メーター
読んだ本の数:24冊
読んだページ数:6796ページ

メロディ・フェア (文芸)メロディ・フェア (文芸)感想
化粧は、顔を「つくる」ことではなくて、本物の自分になること、という考え方は新鮮だった。なるほどねえ。化粧しながら本物の自分をみつける。見せかけの華やかさに囚われないもっと大きな「世界征服」は何かな。中途半端に「ほっこり」なんてしている暇はないのだ。
読了日:5月29日 著者:宮下 奈都
ファラゴ (Modern&Classic)ファラゴ (Modern&Classic)感想
このままホーマーの一人称語りを読み続けていたら、いつか柵の向こうへ行けるかもしれないし、自分の物語を語りだすかもしれない。寝て起きたら、突然ヒ―ローになっているかもしれない。たいていは何も起こらないだろうけど。どこかにあるような気がしてファラゴを探したくなる。
読了日:5月28日 著者:ヤン アペリ
アリブランディを探して (STAMP BOOKS)アリブランディを探して (STAMP BOOKS)感想
様々なことが起こり、様々なことに気が付き、様々なことを考えた、なんといろいろなものがぎっしりと詰まった一年間だっただろう。自分探しの物語は、周りの人たちへの思いこみを捨てることでもあるった。次のステージを期待させる爽やかなラストシーンが気持ちよい。
読了日:5月25日 著者:メリーナ・マーケッタ
たったひとつの冴えたやりかた 改訳版たったひとつの冴えたやりかた 改訳版感想
あのときああすれば、こうすれば、とか、何を言っても今さらだね。たったひとつのやりかた。これしかなかったのだよね。それでも、「冴えたやりかた」なんてたまらないではないか。大人としての無力感、悔しさは半端ではない。コーティとシルの素晴らしい相棒ぶりが心に残る。
読了日:5月24日 著者:ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
犬や猫を長生きさせる秘訣―元気に!!楽しく!! もしかして、人間も!!犬や猫を長生きさせる秘訣―元気に!!楽しく!! もしかして、人間も!!感想
正直、頭の固い私には直ちには受け入れがたいものもある。それでも、大切な家族が幸せに命を全うするために今何をすべきか・すべきではないか、を考えてみたい。人間と一緒に暮らす動物たち。譲歩して人間の社会に無条件にあわせてくれる動物たちはなんて優しい大人なんだろう。
読了日:5月23日 著者:永田 高司
朝のコント (岩波文庫 赤 562-4)朝のコント (岩波文庫 赤 562-4)感想
二十四編のコント(小品)は舞台さまざま、状況も様々、ジャンルも様々だけど、全体として牧歌的な雰囲気が漂う。『チエンヌの女房の足』『ぬけやすみ』『サタンの敗北』『マッチ』が印象に残る。作品を飾る沢山の挿画は作者が描かれたもの? 何も説明がないのが気になって。
読了日:5月22日 著者:フィリップ
ならずものがやってくるならずものがやってくる感想
このならずものには、誰も、どうしたって勝ち目はないのだ。勝ち目はないのだけれど、打ちのめされるばかりではないのだ。ならずものがいなければ、決して知ることのなかった静かで豊かな共感が、ひたひたと満ちてくるのを感じている。
読了日:5月21日 著者:ジェニファー・イーガン
五月の霜 (lettres)五月の霜 (lettres)感想
冬を耐えて、やっと咲き始めた花々を、思いもかけない寒気があっというまに打つのめしてしまうのも、また五月なのだ。痛々しい物語だが、読んでいる間とても楽しかった。豊かな感受性の花開く時。美しいものへの憧れ、心豊かな友人たちとの小さな集いは、小さな灯のように明るい。
読了日:5月20日 著者:アントニア・ホワイト
ペーパータウン (STAMP BOOKS)ペーパータウン (STAMP BOOKS)感想
少女が消えて、物語が動きだす。行方を追う旅は、自分自身と向かい合い、自分の行方を捜す旅でもあった。卒業間近の群像たちの一瞬一瞬のバカバカしさと、真摯な探求と、どちらもまぶしく、一瞬一瞬を止めてとっておきたいような輝きだった。忘れ難い卒業の物語だった。
読了日:5月19日 著者:ジョン・グリーン
明治少年懐古 (ウェッジ文庫)明治少年懐古 (ウェッジ文庫)感想
手仕事の得意なおじいちゃんが、一枚一枚丁寧に書きあげてくれたもの。その一枚一枚を丁寧に綴じて一冊の本にしてくれたもの。そして、特別に手渡したい人にだけ、大切に分けてくれたもの。そんな気がする本なのだ。この本を手許に持つのは、少しだけ泣きたいような嬉しい気持ち。
読了日:5月17日 著者:川上 澄生
銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)感想
銀二貫、最初から天神様のお金だったんだなあ。天神さまは金をこのようにまわしてくださるか。金の話がこんなにも清々しいのは、大阪という土地柄か。「敵わん」大阪人の心意気である。上質な練り羊羹は、きっとこんな口どけ。こんなすっきりとした甘さ。寒天菓子が食べたいな。
読了日:5月16日 著者:高田 郁
木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)感想
どっちが上で下なのか、どっちが右で左なのか、わからなくなってくる。そして、はらはら・どきどきすればするほど、長閑さや、楽しさが、ふっふっと湧き上がってくるのです。なんともご機嫌な知的なゲームに招待されたような気分です。(それにしては、ドンくさいわたしでした)
読了日:5月15日 著者:チェスタトン
隠れ家 アンネ・フランクと過ごした少年 (海外文学コレクション2)隠れ家 アンネ・フランクと過ごした少年 (海外文学コレクション2)感想
この本のペーターを通して、「アンネの日記」の外のペーターに思いを馳せ、10代の青年が二年以上も隠れて暮らすということがどういうことなのだろう、と想像する。アンネの日記の外には、たくさんの人々のかけがえのない(書かれなかった)日記があることに思い至ります。
読了日:5月13日 著者:シャロン ドガー
震災と言葉 (岩波ブックレット)震災と言葉 (岩波ブックレット)感想
あとがきの「…忘れるなと世間は言うわけですが、一つの切実な声として、忘れる努力をして前へ進んでいく、ということもある」との言葉が突き刺さるようだった。善意(のつもり)が、無神経な心ない言葉になっていないか、単なるお題目になっていないか…申し訳ない気持ちが強く湧きあがってきます。
読了日:5月12日 著者:佐伯 一麦
チボー家の人々 (11) (白水Uブックス (48))チボー家の人々 (11) (白水Uブックス (48))感想
呆然としている。覚悟はしていたが、まさか、こんな形で。人間たちの無責任さは、この時代だけのものではない。よく似た話はどこにでもある。それが恐ろしい。わたしは誰の顔に一番よく似ているのだろう。容赦のないラストシーンは、愚かな人間たちをあざけっているようだ。
読了日:5月11日 著者:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
わからん薬学事始1わからん薬学事始1感想
ぶっ飛んだ設定についていけるだろうか、と不安になったのは最初だけ。ぼっちゃん草多の浦島太郎ぶりのおもしろさ。個性的で魅力的な人々にわくわく。この環境で草多はどのように成長するのか。沢山の謎の答えはいつどういう形で得られるのか。物語の扉は開きかけたところ。
読了日:5月10日 著者:まはら 三桃
旅の窓旅の窓感想
写真はミステリのよう。漠然と眺める写真に、沢木さんの言葉が加わると、ふいに、印象が変わる。その一枚が色鮮やかな物語を語り出し、忘れ難い一枚になる。「見る人を見る」「記念写真」「勝負師」「芸術的な皺」「旅する一家」が心に残ります。素晴らしい旅をありがとう。
読了日:5月9日 著者:沢木 耕太郎
閉経記閉経記感想
はっきりと物を言う。ズバズバと言う。下品なことを下品に語り、笑い飛ばす。それなのに、下品とは思わない。なぜなら、この人は、二年間にわたって書かれたエッセイのなかで、ただの一言も、他人様の噂話をしない、悪口を言っていない。清々しく美しい「漢」ではないの。
読了日:5月8日 著者:伊藤 比呂美
マーチ家の父 もうひとつの若草物語マーチ家の父 もうひとつの若草物語感想
最後に現れた別の「小さなご婦人たち」の幻に、ここにも「もうひとつの物語」が、と思う。ささやかな理想卿さえも片手で握りつぶしてしまえるような巨大な憎しみ。実体のない理想のもろさ。壊すべくして楽園は壊された。その跡に何を建てるのか。ここから始まる物語があるはず。
読了日:5月7日 著者:ジェラルディン ブルックス
鳥と花の贈りもの鳥と花の贈りもの感想
写真も文章もいずれ劣らぬだけに、勿体ないような気がしてしまった。写真は文章の添え物になろうとしているみたいだし、文章は文章で写真の添え物になろうとしているみたいに感じた。別々だったら、もっと堪能でできたのにな(贅沢な本に、贅沢なことを言う)
読了日:5月6日 著者:串田 孫一,叶内 拓哉
懐中時計 (講談社文芸文庫)懐中時計 (講談社文芸文庫)感想
過ぎゆく日々のスケッチ、亡くなった人々の横顔。まるで列車の窓から見るように風景は変わっていく。それなのに、作家は残される。しみじみと寂しくもなります。しかし、必要以上に感傷的ではないのです。それがよい感じ。大寺さんの物語全部と『懐中時計』が好き。
読了日:5月4日 著者:小沼 丹
愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)感想
語り手のしぐさや、ふと頭をよぎる言葉、周りの情景の、何に心ひかれ、どう感じたか。一瞬に見えるその出来事から、彼や周りの人々に起こっているであろうあらゆることが切れ切れに見えてくる、繋がる。短篇なのに長編のよう。
読了日:5月3日 著者:レイモンド カーヴァー
101/2章で書かれた世界の歴史 (白水Uブックス)101/2章で書かれた世界の歴史 (白水Uブックス)感想
人間は、夢見る者であり、物語を語る者である、ということを強く意識している。悲劇が続く歴史に絶望しないで、くりかえされる歴史に退屈しないで、生きていけるのは、物語の力なのか。または、キクイムシ以上のしたたかさのせいなのか。
読了日:5月2日 著者:ジュリアン バーンズ
夜市夜市感想
「通りゃんせ」の歌詞を思い出す。何も考えず、ふらふらと迷い込んだ異界は怖いより、美しい。儚いようにさえ見える。後ろを振り返った時、ふいに怖ろしさに気付くのだろう。解っているが、ある日目の前にそんな風景が現れたら、どうしよう。どこも岐路ばかり。正解もまちがいもない。選んだ道を進むだけなんだね。
読了日:5月1日 著者:恒川 光太郎

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