鳥と花の贈りもの

鳥と花の贈りもの

鳥と花の贈りもの


串田孫一の文章を読みたいと思ってこの本を買ったのでした。
見開きの左ページには、叶内拓哉さんによる鳥と花の写真。
右ページの串田孫一さんの文章は、写真から得たイメージを文章にしたのだろうか。


写真も文章も素晴らしいのだけれど、いずれ劣らぬだけに、なんだか勿体ないような気がしてしまった。
写真は文章の添え物になろうとしているみたいだし、文章は文章で写真の添え物になろうとしているみたいに感じたのだ。
別々だったら、もっと堪能でできたのになあ・・・(これはわたしの個人的な思い。贅沢な本なのにね)


串田孫一さんのエッセイは、写真に忠実なので、読みながら、いちいち文章と写真と突き合わせてしまいます。そして、この場面の外にある串田さんの世界を忘れそうになる。
写真を意識しないで、ただ、文章だけを読もう。
そうしたら、言葉が、澄み切った泉の水みたいに、肌に冷たく気持ちよく感じる。
鳥について語っても、花について語っても、情景について語っても、その向こうに串田さんがいる。
静かに変わっていく風景をあるがままに(諦めではなく)受け入れている、潔い姿が見えるような気がする。


鳥たちの写真も、文章と切り離して見るのがいいな。
まるで、請われてポーズを決めたかのような絶妙な一瞬の鳥たちの姿は、自然のなかの、こちらもあるがまま。
この一瞬の前にも後ろにも、彼らの生活がある。そして、切り取られた写真の枠の外にも世界は広がっているのだ。


本のカバーの、鳥たちのスケッチ(カット?)は串田さんの描いたものだそうです。
素朴な音楽のような絵です。