- 作者: 下田昌克,伊藤比呂美
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2013/02/15
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る
>今日、わたしはお皿を洗わなかったから始まる、たった22行の詩です。
ニュージーランドのある子育て支援施設の掲示板に貼ってあった、という読み人知らずの詩です。
「今日 伊藤比呂美 訳」で検索すれば、全文掲載されたサイトがたーくさんみつかります。
普通の人の声の力、それを助けるネットの力が、この詩を消えさせず、守り、広め、そして、この美しい本を生み出したのだ。
>ベッドはぐちゃぐちゃと、この詩は続くのです。
浸けといたおむつは だんだんくさくなってきた
赤ちゃんを抱いたおかあさん。
まわりには彼女を見守る人も、苦労を分かち合ってくれる人もいないわけではなかっただろう。
そんなことはわかっているんだよね。でも、そういうことではないんだよね。
何が特別にしんどかったのか、と言われたら、きっと答えられないのだ。
どうってことないと言いながらこなしてきた日々のほんの小さな「もうひとがんばり」が、それと知らないうちに塵のように積って、いつの間にか身動きできなくなっていた。そんな日がある。
子を抱いた親たち誰もがきっと一度は(いいえ、何度も)つぶやいたことのある言葉だったはず。
経験した人もしない人も、きっとそれをわかっているから、最後の行に近づくにつれて気持ちが高揚してくる。
金色の言葉が空から降ってくるみたいだ、と感じる。
(そうしてわたしはあなたを育てた。そうしてわたしはあなたに育てられた)
思えば、子育ての場面だけの詩ではない。
今だって、これからだって、掃除しないで一日を終えることもある。
とりこんだ洗濯ものは畳まれず、ソファの上に山になる。
夕飯の支度をしなくてはいけないのに、動けないこともある。
それでも、きょう、自分に向けられた大切なだれかの笑顔を思い出せたなら、きっとそれもいいんだね。
そして、ちゃんとやった一日だった、とこっそり言ってもいいよね。
下田昌克の画が、詩の一行一行と響き合って、とてもよいです。