3月の読書

2013年3月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5362ページ

チボー家の人々 (9) (白水Uブックス (46))チボー家の人々 (9) (白水Uブックス (46))感想
純粋なジャックは人一倍苦労して、この先どこかで死ぬのではないかって気がして仕方がない。それでも自分の生き方を貫ける彼を果報者と思う。アントワーヌの事が気になる。外側から計り知れない彼の空虚さのために。
読了日:3月29日 著者:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
首斬り人の娘 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)首斬り人の娘 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
人も嫌がる首斬り人だが、その公平さにも知力にも驚かされる。真の悪役はもしや街の安泰のために庶民の命を屁とも思わぬ権力者か。首斬り人の娘と医者の恋が、やりきれない体制に風穴をあけるようだ。応援したい。
読了日:3月27日 著者:オリヴァー ペチュ,Oliver Potzsch
the TEAM ザ・チーム (集英社文庫)the TEAM ザ・チーム (集英社文庫)感想
うできき四人兄弟などの昔話を思い出す。傑出した能力を持った者たちが力を合わせて困難な課題を切り抜ける物語。インチキ話なのに、拍手喝采してしまうのは、彼らの善意と温かさのため。幕引きも鮮やか。見事。
読了日:3月24日 著者:井上 夢人
第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)感想
解説でも批評でもない。最初、本とは関係ない取りとめのない文章と思ったが、実は一冊の本のイメージを適確に鋭く表現していたのだ。こんな風に好きな本について語れるって凄いな。思い切り偏った選書も嬉しい。
読了日:3月23日 著者:又吉 直樹
絵本 即興詩人絵本 即興詩人感想
安野さんの絵とエッセイで浚う即興詩人の旅。現代の風景に19世紀がそのまま生きてる。イタリアの古い街並は百年二百年が一瞬のよう。スペイン階段。カンパーニャ野。ベストゥム。ボルゲーゼ館も本当にあったのね。
読了日:3月21日 著者:安野 光雅
チボー家の人々 (8) (白水Uブックス (45))チボー家の人々 (8) (白水Uブックス (45))感想
戦争をめぐる人々の考え方の温度差にいらいら。サラエヴォ事件の意味を初めて知った。兄弟の複雑な性格を繊細に丁寧に描写する豊かな筆力! 男たちの女性観 は納得できず不快。普通の家庭人はなぜ出てこないんだ。
読了日:3月20日 著者:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
狛犬の佐助 迷子の巻 (ノベルズ・エクスプレス)狛犬の佐助 迷子の巻 (ノベルズ・エクスプレス)感想
言葉にならない寂しさと、寂しさと寂しさが無言で手を差し伸べあう静かな温かさが沁みてくる。ラストの計らいには涙が出そう。ああ、なぜわたしは大人なのだろう。くうっ、数えで七歳はとっくに過ぎちゃった。次なるチャンスは百歳か。百歳の誕生日には狛犬に会いに行こう。
読了日:3月19日 著者:伊藤遊
犬物語 ドクター・ヘリオットの犬物語 ドクター・ヘリオットの感想
素晴らしいヨークシャーの風景。ヘリオット先生の動物たちへの愛情、動物の傍らにいる人々への共感が、伝わってきます。自然への畏敬の心を信頼する。車と競争する犬の話、一度だけ吠えた犬の話などが印象的。
読了日:3月18日 著者:ジェイムズ・ヘリオット
猫物語 ドクター・ヘリオットの猫物語 ドクター・ヘリオットの感想
山猫オリーとジニーに手を焼くヘリオット先生が微笑ましい。好きなのはボールを拾ってくる猫バスターの母猫の話。エミリーと路傍の紳士の話。
読了日:3月18日 著者:ジェイムズ・ヘリオット
レンブラントの帽子レンブラントの帽子感想
どうってことない一点から始まって、ずんずん深みに嵌っていく人間関係の泥沼。読者としては傍観者でいたかったのに、いつのまにか巻き添えを食っている。三つの物語の歯がゆさの爆心地にずばり切り込むかのような『レンブラントの帽子』のラストに、ほっと息をついています。
読了日:3月17日 著者:バーナード・マラマッド
口語訳 即興詩人口語訳 即興詩人感想
美しい本。持っているだけで嬉しい装丁、一章ごとにはさまれたイタリアの風景や物語の場面を匂わせるような、風雅なカットが添えられていて。ページをめくるのが楽しかった。ありがとう、口語訳 即興詩人。憧れだった森鴎外の『即興詩人』を読み終えることができました。
読了日:3月15日 著者:アンデルセン
アンデルセン 即興詩人(下) (岩波文庫 緑 5-2)アンデルセン 即興詩人(下) (岩波文庫 緑 5-2)感想
文語と19世紀ヨーロッパの出会いは、「雅」という一文字がなんて似合うんだろう。物語、というよりも、絢爛豪華な夢を見たような味わい。森鴎外の文章で読めたことに感謝したいと思います。文語読みの怪しい私を励まし助けてくれた『口語訳 即興詩人』(安野光雅)に感謝です。
読了日:3月15日 著者:アンデルセン
きのこ文学名作選きのこ文学名作選感想
一つ一つの作品にも、そして、本全体にも、何やら極めて陽気な浮かれ騒ぎのような賑やかさがある。だけど、この陽気さは、狂気に繋がっているような気がする。近づいたら危ないんじゃないか、と警戒する。それなのに、ついふらふらとこの世界に迷い込み、奥へ奥へと進みたくなる。
読了日:3月9日 著者:飯沢耕太郎,萩原朔太郎,夢野久作,加賀乙彦,村田喜代子,八木重吉,泉鏡花,北杜夫,中井英夫,正岡子規,高樹のぶ子,宮澤賢治,南木佳士,長谷川龍生,いしいしんじ
ふしぎな八つのおとぎばなしふしぎな八つのおとぎばなし感想
おとぎ話が、ほかの物語と違うのは、いろいろなことがぼんやりしていることかもしれない。ぼんやりの外に沢山のお話が広がっている。いい塩梅のぼんやり加減が、何度も何度も聞きたい、と思わせるのかもしれない。一番好きなのは「メリュシ―ナ」日曜日のへびがとてもかわいい。
読了日:3月6日 著者:ジョーン・エイキン
半分のぼった黄色い太陽半分のぼった黄色い太陽感想
半分上った黄色い太陽は上りきらずに沈んだ。だけど、気が付いているだろうか。本物の太陽は、だれも重きを置かない場所から静かに上り始めたのだ。この太陽は沈まない。静かで控えめで、小さいけれど力強い。そして、天空高くのぼり、ひときわ明るく輝く。
読了日:3月5日 著者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
パラダイス・ロストパラダイス・ロスト感想
そら、本当はそれが知りたかったでしょ、と誘導し、揺さぶる。そして、こちらをうまく乗せておいて、ゆらりと身をかわして、逃げてしまう。こちらには何も残らない。はずなのに、逃げかたの鮮やかさに恐れ入り、よいものを見た、という気持ちにさせる。D機関おそるべし。
読了日:3月4日 著者:柳 広司
ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)感想
携帯電話もあったにはあったがほどんどの人は持っていない、それはほんのちょっとだけ以前のことなのに、いまや懐かしい「昔」になってしまいました。そういう感慨もまた、この世界をよりいっそう魅力的に感じさせているのかもしれない。
読了日:3月1日 著者:津原 泰水

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