the TEAM ザ・チーム

the TEAM(ザ・チーム) (集英社文庫)

the TEAM(ザ・チーム) (集英社文庫)


『the TEAM』は四人。
名高い霊導師(実はインチキ)の能城あや子を中心に、彼女のインチキ霊視を裏付けるために対象物の事前調査を受け持つ傑出した才能のスタッフの鮮やかな手腕を描く連作短編集です。
彼らの事前調査ったら、ほとんど(いえ、まちがいなく)犯罪であるが、そのあまりの腕の確かさやチームワークの見事さに、感心してしまう。
さらには、彼ら、叩けば埃の出る身(らしい)が、根は善だというのもよい。


舞台裏では、「バカ言うんじゃないよ。霊なんて、いるわけないだろ。バカバカしい」とさらりと言ってのけるあや子先生である。
そんな彼女を頼り、悩みを打ち明ける人々についているのは霊ではないのだ。
引きずってきた過去、周到に隠されていた犯罪などが、思いがけず白日のもとにさらされることもある。
あや子先生の言葉を聞こう。彼女のさりげない言葉が温かい。
霊なんてホントは信じていないけれど、優しい言葉もないけれど、
人生の苦みはたっぷり味わってきた彼女(と、影のスタッフたち)の、弱い者に寄せる気持ちは清々しくて、ちょっと嬉しい。


もっと読みたい、もっともっとと思っているうちに、もう最終話。
幕引きの鮮やかさに舌を巻く。
去り際も見事。気持ちよいくらい何も残してくれないんだね。まいってしまった。


「うできき四人兄弟」(グリム童話) 「空飛ぶ船と世界一のばか」(ロシア:ランサム再話) 「シナの五人兄弟」(中国:ビショップ再話)
などなどを思い出していました。
どれも、各々違う分野のマイスターの中のマイスター、ひときわ傑出した能力を持った人間たちが集まって、それぞれの能力を寄せ集めて困難な課題を切り抜ける物語である。
ひとりひとりの能力は、そこだけ飛びぬけていればいるほどおもしろい。
きっと「the TEAM」は、現代のおとぎ話。