(口語訳)即興詩人

口語訳 即興詩人

口語訳 即興詩人


二カ月かけて森鴎外「即興詩人」を旅した。読んだ、というより旅したような感じでした。
自力では一歩も前に進めなかった旅のガイドをしてくれたのが、この本でした。
森鴎外の『即興詩人』が、原文に忠実に、平易な口語に訳されています。
あくまでも口語訳であるため、現代文ではあるけれど、独特の文章。
現代文なのに、まったくの現代文でもなく、文語でもなく。
「訳文」独特の素直さ・不自然さ(?)が、一種の味になっているのです。
ちょっと現実離れした印象。その感じがおもしろいのです。
その独特の文章が、無理なく即興詩人のイタリアに(それも明治の文豪の目を通したイタリアに)タイムスリップさせてくれました。
森鴎外と古文苦手なわたしとを仲立ちしてくれるのに、願ってもないガイドだったのです。


この本はとても美しい本です。
持っているだけで嬉しい装丁、一章ごとにはさまれたイタリアの風景や物語の場面を匂わせるような、風雅なカットが添えられていて。
この本のページをめくるのが楽しかった。


ありがとう、口語訳 即興詩人。
おかげで憧れだった森鴎外の『即興詩人』を読み終えることができました。