夢野久作、加賀乙彦、村田喜代子、北杜夫、中井英夫、高樹のぶ子、南木佳士、いしいしんじ、
長谷川龍生、宮澤賢治、和泉鏡花、八木重吉、萩原朔太郎、
今昔物語、狂言・・・
時代もジャンルも様々な作家たちの饗宴16作。
なんという豪華さ。その凝りよう。
一作ごとに紙質も紙の色も違う、活字も違う、文字の大きさも、それどころか紙面のデザインそのものがまるで違う、
挿画のあるなしも、カラーかモノクロかも・・・それこそどんな制限も設けず、でも、いかにもその作品らしい紙面を供する、
それは16の各作品を、16のデザインの違う小箱に一つづつ大切に納めて、どうぞと差し出されたような気がするのである。
16の小箱には、共通するテーマがある。それは「きのこ」・・・
きのこ。きのこという言葉にこもる妖しげな魔力はなんだろう。
きのこはおいしい。舞い上がるほどおいしい。だけど、はずれたらそれこそ三日三晩のたうちまわった後に絶命するかもしれない。
きのこは怖ろしい。それなのに、その姿はなんてかわいらしいんだ。
光の通らない湿ったところでひっそりと待っているような気がする。罠みたいに。
この本に納められたきのこ文学16。
一つ一つの作品にも、そして、本全体にも、何やら浮かれ騒ぎのような陽気さ・賑やかさがある。
だけど、この陽気さは、そこはかとなく怖い。どこかいかがわしい。朗らかさの後ろ側にぽっかりと空いた暗闇が見えるようだ。
この陽気さは狂気をはらんでいる。
これ以上近づいたら危ないんじゃないか、と警戒する。それなのに、ついふらふらとさそわれて、この世界に迷い込んで、もっともっと奥へ奥へと進みたくなる。
日陰的な絢爛豪華さにくらくらします。読んでいると、何となく、茸のほこりっぽい匂いがしてくるよう。