原発問題に「無関心」なあなたへ。

原発問題に「無関心」なあなたへ。

原発問題に「無関心」なあなたへ。


表紙には、32名の著者の名前が並んでいる。
さまざまな分野の第一戦で活躍されながら、原発事故・放射能汚染の危機を真摯にとらえ、脱原発に向けて、精力的に活動し続けている人たちです。
この本には32名の熱いメッセージが収められているのです。
熱い・・・けれども、言葉は丁寧で解りやすく、語り口は穏やかです。誠実な文章が続きます。
強い信念を持ち、地道に活動し続ける32名に静かに頭をさげる。


しかし、そのうえで、思うことがあります。
これは、静かな本ではありますが、とても強い本でもあるのです。
もともと著者達に賛同する読者にとっては、力強いエールとなるでしょう。
だけど、この本のタイトルは、『原発問題に「無関心」なあなたへ。』です。
本当に「無関心」(どの辺までを無関心というだろうか)の人は…ついてくるだろうか。
関心の無いものが、いきなり一方向に強く引っ張られたとき、反発を感じないだろうか。
いくら穏やかな言葉、とはいえ、32人もに取り囲まれて説得されたら苦しくならないだろうか・・・
さまざまな考えかたがあるなかで、一方向の考え方だけを伝えて…伝わったとしてもそれは本当に伝わったといえるのだろうか。


この本で私が一番感銘を受けたのは、一番最後の鎌仲ひとみさんのメッセージでした。
鎌仲さんは、大学で原発事故について自由に話し合う授業をしたときのことを語られました。
その話し合いのルールとして、「正直に自分の思っていることを話しても誰も批判しない、ただそれを聞くだけ」としました。
そうしたら・・・
わたしのほしいのはこの教室のこの空気だと思った。


原発問題については話せない・・・そういう空気がある。本当は話したい。でも話せない。なぜ?
もしかしたら、「話せない」のではなくて、自分とは違う考え方をする相手の言葉をちゃんと「聞けない」ことが問題なのかもしれない、と初めて考えました。


夢物語だ、と笑われるかもしれない。何も分かってない、と批判されるかもしれない。
だけど、一冊の本のなかに、別の立場の人たちのメッセージも同じだけあったらいいなあ、とわたしは思ったのです。
それこそ、「正直に自分の思っていることを話しても誰も批判しない、ただそれを聞くだけ」ができる本があったらなあ。
そうして、そのうえで・・・
真摯に語られているのはどの言葉なのか。自分の魂に響くのはどの言葉なのか。どれが石ころでどれが宝なのか・・・
読者は自分の目で選びとれたらいいと思ったのです。(伝わるべき言葉は伝わるべき人に必ず伝わると思います)