月の少年

月の少年

月の少年


両親を海で失った少年の暗い孤独な心が、静かで幻想的な世界に結晶したようでした。
死…冷たく怖ろしいものであるはずの死だけれど、その死の中に自分の最愛の人がいる、と思ったとき、
それは、「生」よりも、むしろ温かく慕わしいものに感じられるのかもしれない。


少年のそばで、彼を見守り続けた祖父はどんなに辛かっただろう。
(祖父自身もまた、大切な娘を失ったということなのだ)
少年を「死」から引き戻すのは、祖父の無言の見守りであろうか、と思う。
だけど、祖父の「生」は苦しい。
娘の死を背負い、孫の苦しみを見守りながら、もくもくと自分の仕事を続けることであるから。
少年は祖父のように生きることを選んだ、ということなのかもしれない。
この世の苦しみを引き受ける覚悟を持ったのかもしれない。


粘土をこねる少年。そうして、少年は、自分の思いを形にしていくようです。
「あれ」は、消えてしまったわけではないと思う。あれはもともと、もう一つの自分であったはずだから。
あるべき場所に戻ったのではないだろうか、と思うのだけれど。
別れていた自分の一部が、自分の中に戻り、一つになったのではないか、と思います。
「死」を否定するのではなく、背中を向けるのでもなく、「死」の居場所を自分の中に持ち、そして、生きていく。
生きていってほしいと思います。
最後に冬馬少年が見上げる月が(月に映った影が)とても美しかった。