12月の読書

2012年12月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5431ページ

八月の光八月の光感想
(再読)忘れるわけにはいかないたくさんのこと。忘れる、といういことはどういうことなのか。忘れない、ということは、生半可な覚悟では言えないときもある。それでも「忘れたくない」と思うのは、まずは誰かのためではなくて、自分自身がちゃんと生きるために、と思う。八月の『光』は冷たい恐ろしい光だが、明るい光に繋がっていく。
読了日:12月31日 著者:朽木 祥
カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 2カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 2感想
狎れ合いのような苦々しい現実に、著者は、厳しく問題を叩きつけたのかもしれない。ああまでしなければ変わることができないのか、と。または、ああまでしても何も変わらないのか、と。何も変わらないかもしれない。それでも、変わろうとしている小さな勇気を信じたい。
読了日:12月29日 著者:J.K.ローリング
暗くなるまで贋作を (創元推理文庫)暗くなるまで贋作を (創元推理文庫)感想
おなじみの仲間たちの大いなる無駄口の楽しいこと。しかし哀れなのはアニーの恋人ジョルジュ。最初から最後まで電話やメールの着信のみの登場。巻頭の登場人物紹介のページにも出してもらえず。ヒロインの恋人というのに、なんてかわいそうなんだ。アニーがいざって時に思いだすのは能天気おじいちゃんの言葉。祖父と孫の絆にほのぼの。
読了日:12月28日 著者:ヘイリー・リンド
カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 1カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 1感想
散漫で気が滅入る上巻。読むのに時間がかかった。この後、怒涛の下巻。しかし、原書が発刊されてわずか二カ月で、もう日本語で読めるって、すごい。霧の中でおぼろに霞んでいたものが、クリアになっていくような気がします。
読了日:12月24日 著者:J.K.ローリング
七夜物語(下)七夜物語(下)感想
最後まで、ぼんやりとしたなかで、とらえどころがないまま、とらえどころがないことをよかった、と思い、ああ、これはもうファンタジーではないのだ、と思った。異世界の冒険がすでに現実と混ざり合っている。この物語は忘れられ、すでに新しい冒険が始まっている。それなのに、知っている、という場所に置き去りにされた自分が切ない。
読了日:12月21日 著者:川上 弘美
七夜物語(上)七夜物語(上)感想
暗くて怖いし、ずーっと不安。心の中の封印に、そろそろっと軽く触れたりゆすったりされているようで、しかも、ぐしゃっと握るのではなくて、小出しなのが、不安で落ち着かなくさせられる。下巻へ。
読了日:12月20日 著者:川上 弘美
ハンナの学校 (文研ブックランド)ハンナの学校 (文研ブックランド)感想
目を手を足を、そして、未来を、さらには、今現在という時間を、子どもから奪ったことはなかっただろうか、愛情という衣にくるんで。ハンナの語る「物語」の美しく力強。彼女は、目が見えないけれど、別の「目」で物を見ることのできる子かもしれない。それを見つけ、その目を開かせるために力を貸してくれた人の存在に、心熱くなる。
読了日:12月18日 著者:グロリア ウィーラン
犯罪犯罪感想
猟奇的で目を覆いたくなるような数々の場面は、人間が内に密かに隠していたおぞましい心が、外にはみ出して見えたように思えた。全編に暗いイメージが、じとっとした湿り気を帯びて、横たわっている。愛や悲しみは暗がりに灯った束の間の薄暗い光のようだ。最後のページの「これはリンゴではない」はどう言う意味?そこはかとなく怖い。
読了日:12月16日 著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
ミナの物語ミナの物語感想
この物語は、ミナという籠を開けて、ミナの中のヒバリを空高く解き放つ物語だ。解き放つ、ということはなんと不思議なことだろう。空の高みもまた、ミナのなかにあったのだろうか。ミナ、あなたはきっと、わたしのなかにも、他の人たちの中にもいる。私の中のミナ、あなたに出会えてことが嬉しい。
読了日:12月15日 著者:デイヴィッド・アーモンド
高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)感想
ちゃんとおさまるべきところにおさまるものがおさまる爽快さに、よしよし、それでいいのよ、と思う。主人公を囲む人々の強烈さがこの本の魅力。自分の悲劇を喜劇に変えちゃった(?)ベネット氏の一人称語りで、この本を読んでみたいな。さらにおもしろかったのではないだろうか。
読了日:12月14日 著者:ジェイン オースティン
ジャングル・ブック (福音館古典童話シリーズ (23))ジャングル・ブック (福音館古典童話シリーズ (23))感想
人と狼の間で「自分とは何者なのか」と自問するモーグリの悩みは、彼がまぎれもなく「ヒト」であることを証明しているように思う。モーグリの大胆な自由の謳歌がとても魅力的で、ぐんと四肢が伸びるような気がした。ジャングルの掟と人間の世界の掟の対比は『哲学者とオオカミ』を思い出す。各性質を踏まえ、よりよい生き方ができれば…。
読了日:12月12日 著者:ジョセフ・ラドヤード・キップリング
チボー家の人々 (5) (白水Uブックス (42))チボー家の人々 (5) (白水Uブックス (42))感想
アントワーヌの医師としての一日を描いたこの巻。鼻につくような傲慢さがほとんど消えて、あきらかに成長を感じている。各患者とアントワーヌの間のやりとりは、見ごたえのある場面がいっぱい。一方、命を預かる医師としての苦しい課題に悩む彼の姿が心に残る。前巻から、三年の歳月が流れ、その間にいったい何があったのだろう。
読了日:12月7日 著者:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)感想
高慢と偏見って、タイトルそのままだなあ、と読み進めるにつれて思う。もちろん最後にはおさまるところにおさまるのだろうけど、そこに至るまでの紆余曲折を楽しませていただこう。エリザベスの快活さと賢さがいい。財産や家柄など、実も蓋もない話の連続で、甘い恋愛小説ではない。強烈な人物たちが、素敵な演出をしてくれて楽しい。
読了日:12月6日 著者:ジェイン オースティン
本にだって雄と雌があります本にだって雄と雌があります感想
あまりにへんてこでおかしいのだが、笑っているうちに、生きることへの愛おしさに胸が熱くなる。一種の人間賛歌のようにも思う。そして、本への限りない信頼に胸が熱くなる。もっともっと、本におぼれたくなる。本を読むことは極楽。なぜ、うちの中にどんどん本が増えていくのか納得したような気がしました。>「やっぱりな」
読了日:12月5日 著者:小田 雅久仁
K町の奇妙なおとなたちK町の奇妙なおとなたち感想
子どもの頃って、毎日が不思議だらけだったんだなあ。その不思議は、大きくなったら分かることや、よくわからない怪異(?)が渾然一体混ざり合って独特の空気だった。そんな子ども時代にタイムスリップしたような気持ち。奇妙でなんだか懐かしいK町の大人たち。あの頃、大人も子どもも、今よりもずっと近かったような気がする。
読了日:12月3日 著者:斉藤 洋
アメリカにいる、きみ (Modern&Classic)アメリカにいる、きみ (Modern&Classic)感想
異文化の恩恵を受けつつ、軋轢にとまどい、苦しみ、傷つき、打ちのめされる人々。彼らは、泣きながら、誇りをもって顔をあげる。彼らが見ているのは、富める国の「チャンス」ではない。彼らの根である故郷なのだ。その故郷の姿に感動している。「アメリカにいる、きみ」「スカーフ」「ママ・ンクウの神さま」が特に好きです。
読了日:12月2日 著者:C・N・アディーチェ
フリント船長がまだいい人だったころ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)フリント船長がまだいい人だったころ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
閉じた独特の共同体で、何が当たり前で、何が当たり前でないのか、わからなくなる。起こったことも、言葉にならない理由も、納得はできないけれど、わかってしまった。わかるしかなかった。普通であるということ・いい人でいるということが、怖ろしくて、悲しい。そのとき、「ぼく」は幸せだったのだ、という言葉がただ眩しかった。
読了日:12月1日 著者:ニック ダイベック

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