鮎の歌

立原道造 鮎の歌 (大人の本棚)

立原道造 鮎の歌 (大人の本棚)


詩を繋いで物語ができていく。
寓話のような物語(詩)ばかり。
語り手もいるし、他の人物もいる。
語られる事件もあるし、緩やかな盛り上がりもある。
それなのに、どの物語(詩)も現実離れしている。


主人公たち(どれも詩人自身)は恋をする。だけど、本当に恋をしていたのか。
愛する少女は、陽炎のようでもあり、月の光のようでもある。
きっと、詩人の身近に本当にそういう娘がいたのだろう。
だけど、彼は彼女を本当にありのままに愛していたのだろうか。
彼は生きた娘の向こうに、自分の理想の姿を描いていたのではないか。求めていたのではないか。
彼が愛していたのは自分自身だったのかもしれない。


とても寂しい。彼はいつもひとりぼっちだ。
だけど、充実した世界がそこにはある。
それはきっと寂しくないことよりも大切なものなんだね。
詩は美しいです。とても美しい。
こんな詩を書く立原道造には、もしかしたら、生身の恋など必要なかったのかも…