チボー家の人々(2)少年園

チボー家の人々 (2) (白水Uブックス (39))

チボー家の人々 (2) (白水Uブックス (39))


二巻目です。
長い物語の、まだほんの序幕、とは思うのですが、一冊ごとにドラマがあり、大きな盛り上がりがあり、おもしろいです。
この巻で感じたことを(長丁場、先に行くと忘れそうなので)メモ程度に書いておきます。


一巻に引き続き、ジャック・チボーを中心に読み進める。
家出の代償として、父親の経営する更生施設「少年園」に入れられてしまった彼。
すっかり無気力になり、まるで生きた亡霊のようだった。
巧みな(?)目に見えない虐待が、14才の少年をこうまで変えてしまったことにぞっとする。
一年がすぎたのだ・・・


チボー家の人々、フォンタナン家の人々、新たに登場した人々の赤裸々な内面描写は、
冷笑的で、辛辣だ、と感じた。
そのまま読めば、誰ひとりとして好きになれない。
チボー氏は封建的・自己中心的で、冷たい。不快感を通り越して、笑いたくなるほど。
アントワーヌの高潔な(そう見える)勇気ある行動は、本来、この本の目玉(?)と思うが、
この行動をめぐって、彼の内面は激しく動く。
彼の内面の揺れや、ずるさ、奢り、野心などをここまで丁寧に描くのは、ちょっと気の毒なような気がする。
誰にもあることのように思うけれど、一方で独特の気持ち悪さも感じている。リズベットのこととか・・・
フォンタナン夫人の優しさや信心深さに、彼女は実際、ものすごく聡明なのか、ものすごく愚かなのか、と考えている。
そして、ダニエルの変わりようときたら・・・
一年前の初々しさ、気持ちのよい賢さ、優しさは、見かけだけはそのままで、なんという変貌を遂げたのか。


ダニエルの変貌に比べたら、ジャックはむしろ「変わらない」のかもしれない。
一年間の牢獄生活が、彼を14才のままにして、時を止めてしまったようにも感じられた。
今、むさぼるように本を読んでいる彼。彼の才能の行方も気にかかる。


少年たちは、恋愛をして、少年期を脱していくようだ。
恋をして、お互いの性格、理想、価値観までがこれほどまでに遠く離れてしまったことを知る。
残酷だ。
ジャックも、どうもあまり嬉しくない誘導のもと、嬉しくない方向に走っているような…