行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙

行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙

行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙


この本一冊、まるまる伯父さん(!)からの手紙なのです。
この手紙は一冊のノートに、日記ふうに続けて綴られています。
だから、本の見開き中央(なんて言うんだろ)には、全てのページに、スプリング(スプリングノートらしい)が描かれている。
この手紙(ノート)は、イラストと文字の両方で綴られている。
鉛筆で描いたイラストは、丁寧で、繊細で、とぼけていて、おかしくて、不思議なのだ。
文字はタイプライターで打ったことになっている。
いつも太字になってしまう文字、薄くなってしまう文字があったり、手書きでつけたしたり、直したりしてある。
ページのあちこちに、いろいろな沁みが飛び散っていたりする芸の細かさ。
言葉で説明するのはすごく難しい。凝った、隅々まで遊びきったチャーミングな本。
作者が(そして翻訳者さんも)すごく楽しんで作り上げた本なのだろう、と想像します。
だから、眺めているだけで、こんなに楽しいんだ。
ちょっとトールキンの「サンタクロースからの手紙」を思い出す。


伯父さんは探検家で、亀犬(!)のジャクソンを連れて白いライオンを探しているらしい。
ジャクソン(あの表情が!)と伯父さんの凸凹コンビネーションが、とぼけた雰囲気でとてもいいのだ。
伯父さんが旅する世界は、見たことも聞いたこともない不思議な景色で、見たことも聞いたこともない動物が生息していたりする。
・・・地の果てのどこかに、本当に、こんな不思議な世界があるかもしれない。この世の地つづきのような感じもする。
伯父さんの冒険は、荒唐無稽で、一言で言ったら途方もないホラ話。
だけど、何度も訪れる危機一髪に、ついつい夢中になってしまう。
手に汗握るが、あの手この手で切りぬける手腕(ホラでも、それなりの説得力!)には拍手喝さい。


だけど、ホラ話だよ、と言いつつ、どたばたした印象ではないのです。
それは、伯父さんが、多分に、かなりのロマンチストでもあるからだと思います。
伯父さんの憧れがページから滲み出てきて、読んでいるわたしの憧れに繋がっていくよう。しみじみ。


この手紙、受け取り人は甥っ子の「ボク」、ということになっているけれど、どうやら、伯父さんと「ボク」は一度もあったことがないらしいのだ。
これは、伯父さんからの手紙だけが本になっているので、「ボク」がどんな人物で、どういうわけで行方不明の伯父さんが彼に手紙を書く気になったのか、
まるっきりわからないのです。
だから。余計に「ボク」の存在が気になります。
ある日突然、いるのかいないのかわからない伯父から、こんな素敵な手紙が届いたら、どんな気がするだろうなあ。


行方不明の伯父さんはまだ帰ってこないのね。どこかでまだ「あぶらくそっ」と言いながら、冒険の旅を続けているかもしれない^^