さよなら駐車妖精(パーキング・フェアリー)

さよなら駐車妖精 (創元推理文庫)

さよなら駐車妖精 (創元推理文庫)


ファンタジーですが、私たちが暮らす現代のこの世界のどこかに、こんな国、こんな町があるんじゃないか、と思うような身近さです。
ただ、やっぱり明らかにファンタジーなんだ、と納得するのは、この世界には妖精が存在する。
目に見えない妖精で、人につきます。
(妖精がつく人とつかない人がいる。
一度ついた妖精は、例外はあるものの、たいていその人の生涯に渡り、その人について、影響を及ぼす)
人につくけれど、人と妖精との間にはコミュニケーションはありません。
妖精はそれぞれ、みんな違った性質を持っていて、人に幸運(?)をもたらすためにせっせと働くのです。
そういう世界です。


主人公チャーリー(シャーロット)は、14歳。スポーツ高校に通っています。
チャーリーについている妖精は、彼女が車に乗りさえすればすんなり駐車スペースをみつけさせてくれる妖精で、
14歳の身には、ちっともいいことなんかないどころか、大迷惑をこうむっている。
彼女としては、なんとかこの妖精を放り出したい。ついでに(あわよくば)もっと良い妖精についてほしい、と思っている。


ファンタジー、といいながら、普通の中学生の普通の生活、普通の悩みや願い、憧れ、さらには恋の物語でもあるのだ。
チャーリーは、がんばりやだし、へこたれない。
でも、
「お姉ちゃんは自分本位だから、自分以外の人のことなんか考えもしないんだよね」
と妹ネトルズに言われちゃうようなところがなきにしもあらず。
そんな彼女が、妖精を追いだすどんな手をみつけるのか? それは成功するのか?
悪戦苦闘しつつ、周りの人の気持ちを考えるほどに、成長していく過程は微笑ましい。
おいおい、それでいいのかい、と思わなくもないけれど^^
チャーリーを囲む仲間たちも、多彩な個性が揃っていて、それぞれが魅力的、それぞれについてもっともっと知りたい。
(彼ら一人一人を主人公にしたシリーズになったら楽しいんじゃないかなあ、なんて密かに思っている)


妖精って、いったい何?
「幸運をもたらす小さな目に見えない生き物」というけれど、ほんとにそれは良いものか?
一種の突出した個性のようなもの、かもしれない。
仲良くお付き合いしながら、あるいはもてあましながら、
いつか、その存在が「気にならない」と思えるようになったら、
もしかしたら、それが本当の成長かもしれないけど。


訳者あとがきに「読者のみなさんは、どんなお仕事妖精がお好みでしょうか?」と書かれていました。
この本を読み終えた後に聞かれたら…どんな妖精がついても、面倒くさいことになりそうで^^
いらないかな〜、と思う。
もうちょっとおだやかに、いるんだかいないんだかわからないくらいの適当さで働いてくれたらいいのに。